超水平線レーダーあるいは見通し外レーダーともいう。地球の水平線の向こう側の部分で発射されたICBM(大陸間弾道ミサイル)などの長距離ミサイルを発射直後に探知するレーダー。普通のレーダーは超短波またはそれよりも波長の短いマイクロ波を使っているので、直視できる距離内でしか目標物を探知できない。しかしOTHレーダーは短波(HF)通信と同じで、2~20メガヘルツの短波を地球を取り巻く電離圏に反射させ、超遠距離に電波を到達させることができる。OTHレーダーには、目標を通りすぎた電波が乱れるのをとらえる前方散乱式(OTH‐F)と、電波の反射をとらえる後方散乱式(OTH‐B)とがある。OTHレーダーは、1960年代初めに開発され、最初はミサイルによる先制奇襲を警戒するのを主目的にしていたが、80年代以降は遠距離で航空機の動静を探ることに開発の焦点が移った。そのため固定式のものに加えて、野戦部隊を支援できるような移設可能OTHレーダー(re-locatable OTH radar)も開発されている。しかしOTHレーダーは、電離圏の反射を利用する原理上、近距離には探知不能空域が発生し、また目標物に比べて波長が長い関係上解像力は低く、一定の大きさの探知区域(セル)内で機数不明の航空機が動いているのがわかる程度ともいわれる。だが使用波長が航空機の大きさに近いために、ステルス機相手でも電波の共鳴により反射が強まる可能性が指摘されて、ステルス対策としてのOTHレーダーの研究も近年行われている。
[剣持一巳・野木恵一]
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