日本大百科全書(ニッポニカ) 「土壌層位」の意味・わかりやすい解説
土壌層位
どじょうそうい
soil horizon
土壌は陸地の表面付近の岩石や砂礫(されき)の層が風化過程を経て、その場で変質した生成物からなる。変質の状況は地表面から地下に向かって垂直的に変化しており、変質の性質や程度は、狭い範囲でみれば土層内の同じ水準では同じ状態にある。地表面の直下には、雨水の浸透と温度変化を強く受けて、可溶性成分が分解し一般に下層に流乏した部分があり、下層には上層からの溶解成分の一部が集積をおこした部分が識別される。上部層を溶脱層位といい、下部層を集積層位と名づけ、さらにその下はそのような変質を受けない土壌母材とよばれる部分に達する。溶脱層位、集積層位、母材部分のそれぞれの境界は、堆積(たいせき)岩の地層の間の層理面のような明瞭(めいりょう)な面(垂直断面では線となる)ではなく、漸変するものであるが、各層位間の移行部分は地表にほぼ平行の水平方向に追うことができる。溶脱層位の最上部に植物遺体の分解産物である腐植が集積しているとき、とくにその部分を腐植層位ともいう。また、溶脱層位(A層位、略してA層)、集積層位(B層位、略してB層)のそれぞれについて、溶脱または集積の程度や特徴に応じ細区分することがある。土壌の全層(この場合は層位の意味でなく)が各層位に区別できるということは、その土壌の層位分化が発達していること、すなわち土壌生成の過程が成熟段階にあることを意味する。
[浅海重夫・渡邊眞紀子]