地上アナログ放送で使われたテレビジョン方式の一つ。PALはphase alternation by line(走査線ごとに位相反転)の略称。1962年に西ドイツのテレフンケン社が提案し、1967年に西ドイツを中心にヨーロッパ各国などで放送が開始された。この方式は、二つの色信号で副搬送波を振幅変調するという点では、日本やアメリカがアナログ放送時代に採用していたNTSC方式と似ているが、二つの色信号のうち一方のみ(I信号とよばれる、赤オレンジ系と青緑系の色成分)を走査線のたびごとに位相を180度反転させて送る点に特長がある。このようにすると、伝送系の途中で位相変化を受けても、受信側で位相誤差を打ち消して元の色が再現できる。この方式はNTSC方式に比較して、伝送系の位相特性やゴーストによる影響が少なく、サービスエリアの周辺でも信号対雑音比が比較的よい。白黒テレビとの互換性はNTSCよりはやや劣るものの高い。受像機に高精度の遅延線を内蔵する場合には価格がやや高くなる。画面の横と縦の比は4対3、走査線数は625本で2対1のインターレース(飛び越し走査)、フレーム数(1秒当りの画面数)は25フレームである。NTSC方式に比べてフレーム数が少ないためちらつきは多少増えるが、走査線数が多いので画面のきめは細かい。PALには多くの変形系列があり、たとえばブラジルで採用されたPAL-MはPALとNTSCの混合規格ともいえるもので、走査線数525本、フレーム数は30フレームである。PAL方式およびその変形系列を地上アナログ放送に採用した国はイギリスをはじめとする西ヨーロッパ諸国、ASEAN(アセアン)(東南アジア諸国連合)諸国、ブラジル、オーストラリアなどである。1990年代末から2000年代末にかけて、テレビジョンのデジタル化が世界各国で進められ、PAL方式を採用していた国々は、1990年代末から2000年代前半にかけて相次いでDVB-T(Digital Video Broadcasting-Terrestrial、デジタルビデオ放送‐地上用)方式およびその改良型DVB-T2方式の地上デジタル放送に移行し、PAL方式によるアナログテレビ放送を終了している。移行の時期は国によって違うが、たとえば、イギリスでは1998年9月に地上デジタル放送開始、2012年10月にアナログテレビ放送を停波(電波の放出を停止すること)した。なお、PAL方式の映像規格はビデオテープ、ビデオディスク、DVDなどのビデオパッケージにも採用されており、これらはPALの放送終了後も使われている。
[木村 敏・金木利之・吉川昭吉郎]
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