「販売時点」を表すPoint Of Salesの頭文字をとった略号。POSは販売実績データをさすため、一般にPOSデータとよばれることが多い。POSデータには、店舗番号、精算レジ番号、レジ精算日付、商品JAN(ジャン)(Japanese Article Number)コード(事業者および商品を示す識別番号)、販売価格、販売数量が基本データとして記録されている。このPOSデータを読みとるために、POSレジとよばれるデータ取得のための専用レジスターが利用される。小売企業は、POSレジに付随する光学式スキャナーで、商品に付与されているJANコードが含まれる商品バーコードを読み込むことで、販売データを蓄積していく。POSデータはコンビニエンスストアやスーパーマーケット、デパートなどを中心に、多くの小売チェーンで活用されている。在庫管理から発注作業といった作業支援に利用されることが多いが、採用商品の取捨選択などの品ぞろえの企画から検証といった企画支援にまで利用されるケースもある。
近年急速に広まっているのが、顧客を識別するための会員IDを付与したID-POSとよばれるデータである。主体となる各チェーンは、自社のポイントカード会員やアプリ会員から購買データを提供してもらい、それに応じたポイントを還元する。ほかにも、クレジットカードやモバイル決済などのキャッシュレス決済を通して、購入商品に利用者データが付与されたID-POSデータを収集できる。このID-POSは日用品業界から拡大し、近年は食品業界にも広がり始めている。従来のPOSでは得られる情報が販売実績データのみで、性別・年代などの購入者情報や、リピート実績などの購買履歴情報が不明なことが多かったが、ID-POSデータの普及によって売上以外の情報が増え、管理業務だけではなく企画支援や戦略支援への活用が進んでいる。
また、一部の先進的なアパレル店舗は、AI(人工知能)カメラを活用した顔認証によって顧客の識別を実現し、会員でなくても性別・年代とともにID付与を行うID-POSデータの活用が可能になっている。これは将来的に各チェーンに限定した顧客の購買行動だけではなく、地域を包括的にとらえた生活者データの蓄積と活用の可能性をもひらくものである。
[本藤貴康 2025年3月18日]
『本藤貴康・奥島晶子著『ID-POSマーケティング――顧客ID付き購買データで商品・ブランド・売り場を伸ばす』(2015・英治出版)』
point of sales system(販売時点情報管理システム)の略称。流通業において,小売店の店頭で商品の販売動向をオンラインで継続的にチェックし,マーチャンダイジング,在庫管理,物流システムなどを統合的に管理するシステムで,POSシステムともいう。POSは一連のハードウェアとソフトウェアから成り立っている。ハードウェアは,値札→読取装置とキャッシュレジスター兼用のPOSターミナル→店舗内ミニコンピューター→オンラインでつながれた本部のホストコンピューター,という一連の流れによってデータが集計される。値札(タグ)には白黒の縦縞のバー・コードが用いられ,品番コード,メーカー・コード(仕入先コード),プライス・コードなどの情報が組み込まれている。バー・コードは全国的に統一化が進められており,POSターミナル読取用の値札付作業を商品のメーカーや問屋の段階で行うソースマーキングが普及している。顧客により買い上げられた商品は,OCR(光学的文字読取装置)またはスキャナーで一つずつ読み取られ,POSターミナルからすべての販売された商品のデータが送り出される。
POSで最も重要な作業は,集積されたPOSデータを有効に利用するためのソフトウェアまたは利用技術の開発である。POSデータの利用方法には,店舗内の販売を促進するためのインストア・マーチャンダイジング,流通在庫を極限まで減少させる在庫管理システム,商品の受発注をスムーズにさせる物流管理システム,消費者の需要動向を把握する市場管理システムがあり,これらを相互に有機的に結びつけることによって,生産から消費までの商品の流れを垂直的に統合し,流通の合理化を促進することが可能となる。このようにPOSシステムは,時々刻々変化する商品の販売動向をキャッチすることによって,売筋商品を見つけだし,棚割りを変更し,店頭価格を改め,顧客の好みや需要の変化を商品別にとらえることによって,商品の回転率を上げて店頭在庫を減らすことができる。また,きめ細かな品ぞろえは,商品の発注を量的にも時間的にも細分化させることになり,店頭在庫の変化に即応できる機動的な物流システムの構築が要請される。すでにスーパーやコンビニエンス・ストアを傘下にもつ大手の小売業者は,POSシステムから得られた情報にもとづいて,在庫や物流の管理のみならず顧客情報管理システムを確立して小売業のマーケティングを展開している。さらに小売業者のうちには大手メーカーとPOS情報を共有することにより,製・販同盟を結んで製品開発の段階から共同して市場の変化に対応する生産・流通の垂直的統合化が進められている。
執筆者:川嶋 行彦
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… キャッシュ・レジスターは,単体で機能するスタンドアロン機とコンピューターと連続できるシステム・レジスターに大別でき,その中でも各業種ごとの専用機の利用も高まっている。また,販売するごとに,品名,価格などを入力し,各売場の販売状況を即時に把握し,総合的な経営情報管理を可能とするPOS(ポス)(point of salesの略称)システムの研究も活発になっており,商品のタグにつけた品名,規格,価格などを読みとるキャッシュ・レジスターが,一部で使用されている。【末次 信義】。…
… キャッシュ・レジスターは,単体で機能するスタンドアロン機とコンピューターと連続できるシステム・レジスターに大別でき,その中でも各業種ごとの専用機の利用も高まっている。また,販売するごとに,品名,価格などを入力し,各売場の販売状況を即時に把握し,総合的な経営情報管理を可能とするPOS(ポス)(point of salesの略称)システムの研究も活発になっており,商品のタグにつけた品名,規格,価格などを読みとるキャッシュ・レジスターが,一部で使用されている。【末次 信義】。…
…このジレンマを解消し,消費者の欲求を満たしながら流通在庫を少なくするためには,商品ごとに需要の動向を敏感にキャッチする情報システムと,その変化を供給に迅速に反映させる垂直的に統合された流通システムを構築する必要がある。小売店の店頭に設置されたPOS(point of sales)システムからのデータは,最適なマーチャンダイジングのための有力な指標となりつつある。【川嶋 行彦】。…
※「POS」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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