経営体の各種業務の遂行が、経営目的に沿ってもっとも効果的に達成されるよう、諸種の施策を体系的に講ずること。経営管理という概念には二つの意味内容が含まれている。第一は経営体の管理という意味であり、第二は「経営と管理」という意味である。経営体とは、統一的な意思のもとに一定の継続的施設を基礎にして、複数の人間が協働するシステムをいう。したがって、国家、企業、学校、家庭などは、すべて経営体である。第一の意味における管理は、このような経営体をうまく運営するための施策全体をさすから、広義の管理であり、英語でいうマネジメントがこれにあたる。第二の意味の「経営と管理」は、このような広義の管理ないしマネジメントを階層的に機能分化してとらえた用法であり、英語でも経営をadministrative managementとよび、管理をoperative managementとよんだりする用法があり、これに対応する。いずれにせよ、経営という語には、経営体と経営機能の二つの内容が含まれ、管理には広狭二義がある。
[森本三男]
前述のように、経営と管理に二大分される。経営とは、経営体の活動について、全体的、基本的、戦略的、長期的、政策的意思決定を行う機能であり、その中心は経営体の革新である。具体的にいえば、意思決定は、臨時的、経常的、評価的決定の3種に分けられる。臨時的決定は、経営体の設立、改組、合併、解散、系列、集団などに関する組成的決定と、主要役職者の選任に関する最高人事決定である。経常的決定は、経営理念、経営目標、経営戦略、長期経営計画の決定などを含む。評価的決定は、全体的業績の確定や成果配分の決定などをいう。これに対し、管理とは、経営によってなされた諸決定の枠内で、経営体をもっとも効率的に稼働させる機能である。大規模経営の場合、このような管理の内部において階層分化がさらに進行する。通常それは、全般的効率化を目ざす全般管理general managementと、職能別、製品別、地域別などの部分的経営体の効率化を目ざす部門管理departmental managementに二分され、部門管理はさらに中間管理middle managementと作業管理lower managementに分けられ、管理機能自体が三層体系をとるとされる。これら諸機能の具体的担当組織は、経営体の種類によってまったく異なるが、企業を例にとれば、経営機能は取締役会と社長によって、全般管理機能は社長、副社長、専務、常務などによって、部門管理は事業部長、部長、課長、係長などによって担当されている。なお、社長は、経営と管理を連結するかなめに位置し、そのゆえに強大な権力を保有することになる。
[森本三男]
経営と全般管理の両機能は、革新と効率化という中心課題の相違はあっても、対象領域が経営体全体であるので、分化の体系を形成する余地はない。これに対し、部門管理はまさにさまざまな部門体系に分化する。いま工業経営を例にしてその分化と体系化の内容を例示しよう。第一に、主要過程別に財務(資本調達)、人事、購買、製造、販売の各管理を体系化する。第二に、これら主要過程を円滑に稼働させるための補助過程として、運搬、在庫、品質、事務のような各業務部門が設けられ、これらについて各管理を行う。第三に、生産資源の要素別に、資金、人材、資材、設備、情報、エネルギー、廃棄物などの各管理を体系化する。第四に、活動の場所別に、工場管理、事務所管理、倉庫管理などの体系をつくることである。第五に、生産資源としての存在を超えた、生活者、社会人、主体者としての人間の問題を扱う労務管理(人間関係管理、参加などを含む)を設ける。第六に、諸種の利害者集団との関係を調整する対境(対環境)問題管理を設ける。第七に、以上の諸管理体系について、実体面と、実体を捨象した価値計数面とに分け、前者については実体的管理を、後者については計数的管理をという二元的管理体系をつくるなどである。最後の点を在庫管理について補説すれば、在庫の実物を変質しないよう、出入庫に便利なように管理するのは実体的管理としての在庫管理であり、過大在庫にならないよう在庫量をコントロールするのは計数的管理としての在庫管理である。
[森本三男]
『柴田悟一・中橋國藏著『経営管理の理論と実際』(1997・東京経済情報出版)』
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[経営・管理の語意]
〈経営〉という言葉は今日,企業をはじめ行政,教育,宗教,組合など各種組織の運営にかかわる言葉として使われているが,日本語としていつごろ定着したかは確かではない。《日本国語大辞典》1940年版には,(1)縄張りをして土台をすえいとなみ造ること,(2)工夫をこらして物事をいとなむこと,とされ,中国春秋時代の《詩経》に(1)(2)の早い使用例があり,日本では(2)の使用例が室町時代の《太平記》にみられる。…
※「経営管理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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