日本大百科全書(ニッポニカ) 「HANA-BI」の意味・わかりやすい解説
HANA-BI
はなび
日本映画。1997年(平成9)、北野武(きたのたけし)監督。犯人の銃弾によって同僚が半身不随になり、別の同僚が殉職してしまった刑事の西(ビートたけし)は辞職する。やくざから借金をし、銀行強盗をした彼は、言葉を話さない余命短い妻(岸本加世子(きしもとかよこ)、1960― )とともに旅に出る。彼らを追ってくるやくざを始末し、かつての同僚に発見される西。彼が妻の礼の言葉を聞いた後、二発の銃声が響く。北野はデビュー以来、死や暴力を多く取り上げてきたが、唐突な、静かで渇いた表現は、死の衝撃と暴力の痛みを観客に強く感じさせる。本作もそうした死と暴力の映画であるが、同時に夫婦愛の物語でもあり、主人公夫婦の旅がユーモアを交えて描かれている。一方、半身不随になり妻子に去られて苦悩する男の存在は、主人公夫婦との対照をなしている。それまでも北野の監督作品は海外の映画祭に出品されていたが、本作は1997年のベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した。
[石塚洋史]
『佐藤忠男著『日本映画史3』増補版(2006・岩波書店)』