翻訳|sapphire
アルミナAl2O3の結晶であるコランダムのうちで,赤色のもの(ルビー)以外をサファイアという。青玉,青宝玉とも呼び,ダイヤモンドに次ぐ硬度と希少性,美しさにより,高価な宝石とされる。無色,青色はもとより,緑・紫・黄・褐色などがあり,おのおの頭に色名を冠して呼ばれるが,やや橙色を帯びたピンク色の石は,パパラチャ・サファイアと呼ばれ,蓮の花の色を意味する,サンスクリットのpadma rāgaから由来したといわれている。通常サファイアという場合には,最も多いブルー・サファイアを指し,その他の色合いのものをファンシー・サファイア(変り色)と総合的に呼んでいる。サファイアの語源は定かではないが,サンスクリットのsauriratna(サターンsaturnの石)がその起源とされる。神秘的な深みのある青色は,霊魂に安らぎを与え,憎悪の感情を遠ざけ,誠実や慈愛,徳望を象徴し,9月の誕生石となっている。サファイアは古来より神聖なる石とみなされ,12世紀以降,キリスト教の聖職者の指輪に選ばれてきたという。サファイアで最も尊ばれる色はカシミール産のコーンフラワー(矢車菊)色で,やや白味の淡色である。それに次いで,ミャンマー産のやや濃い青色のローヤル・ブルー,スリランカ産のやや淡色のものが続く。タイおよびオーストラリア産は産出量が多いが,多くがいわゆるインク青色のため,前記の2産地よりも価値は低くなる。また非常に細いルチル(酸化チタン(Ⅳ))の針状結晶の集積(シルク・インクルージョン)によって,アステリズム(星彩効果)の出るものをスター・サファイアという。ブルー・サファイアの色は,鉄分とチタン分の含有によるものである。この着色原因から,最近ではスリランカ産の,ルチルの針状結晶を内包した白色のギューダと称する原石を,高温で加熱処理し,チタン分を溶解し,内部に拡散させてブルー・サファイアにする人工処理も行われている。合成サファイアは,青色のみでなく各色のものが,合成ルビーと同様な火炎溶融法によって,1907年以降,また合成のスター・サファイアも49年以降各国で製造されている。
執筆者:近山 晶
ギリシア人やローマ人がサファイアと呼んでいたのは,じつは現代人の知っているサファイアではなく,主として中央アジアに産するラピスラズリであった。たとえば大プリニウスも,サファイアには透明なものがなく,内部に節があるので彫り刻むには適さないと書いている。今のサファイアは透明で,彫り刻むことも可能なので,これはラピスラズリだと考えなければつじつまが合わないのだ。それでは古代人は今のサファイアを知らなかったのかというと,これについては何とも断言しがたく,たぶん古代人はアメシストあるいはヒアシンスの名でこれを呼んでいたのではないかと思われる。ヨーロッパのシンボリズムでは,サファイアはまず第一に空の青をあらわしている。青色が美しいために,眼病をいやす効能があると信じられた。またインドやアラビアでは,高熱の出るペストに効くともいわれた。11世紀のレンヌの司教マルボードMarbodeによれば〈サファイアは天上の玉座によく似た美しさをもっている。それは純朴なひとの心をあらわしている〉と。これらの点から見て,サファイアはエメラルドに似た効能をもっていると信じられていたことがわかるであろう。
執筆者:澁澤 龍
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
宝石の一つ。鉱物学的にはコランダムと同じ。青ないし灰色。青色系統のものが良質とされる。単結晶の透明に近いものを球形に研磨して、c軸(6回対称軸にあたる)方向から見ると、星芒(せいぼう)と称する6方向に放射状に光る線が出現することがあり、このようなものをスター・サファイアという。これが出ると宝石としての価値がいっそう高められる。サファイアの産状としては、良質のものは、アルミニウムに富む堆積岩(たいせきがん)起源の接触変成岩あるいは特殊な玄武岩中のものがあげられる。花崗岩(かこうがん)質ペグマタイト、気成鉱床、粘土鉱床など熱水交代岩、霞石(かすみいし)片麻岩中のものは、着色はしているが、良質のものは少ない。色の原因は明らかでない。9月の誕生石。
[加藤 昭]
出典 日外アソシエーツ「現代外国人名録2016」現代外国人名録2016について 情報
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鋼玉Al2O3(六方晶系,空間群 Rc,格子定数 a0 = 0.476,c0 = 1.30 nm.単位胞に6個の基本組成が含まれる)の濃青色のものをいう.色は少量のFe,Tiによる.青らん色の透明のものは宝石として用いられる.また,鋼玉の赤色のものはルビーとよばれ,その色は微量のCrによる.ともに時計などの軸受に用いられる.また,シリコンのエピタキシャル成長(エピタキシー)用の基板としても使用されている.ベルヌーイ法および水熱合成法により,広く合成が行われている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…鋼玉ともいう。美しい赤色のものはルビー,また青色のものはサファイアといわれ,宝石として珍重される鉱物。化学組成はAl2O3であるが,少量のFe2O3,TiO2,Cr2O3などを含むものがある。…
※「サファイア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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