中央銀行がインフレ率(物価上昇率)の数値目標を設け、市中の通貨量を制御することで緩やかなインフレを起こし、安定的な経済成長につなげる金融政策。中央銀行に物価インフレ率を守るよう政策を行わせるだけでなく、家計や企業に目標どおりのインフレが発生するとの期待をもたせる効果ももつ。手形、国債、社債、コマーシャル・ペーパーなどの買入れや売出しで市中の通貨量を調節し、インフレ目標に近づける手法をとる。場合によっては、中長期国債の買切りや株式、不動産の買取りによる資金供給も必要との意見もある。
1930年代にスウェーデンが物価水準目標を導入した例はあるが、現代では1990年にニュージーランドが初めて導入した。その後、イギリス、カナダ、オーストラリア、ブラジル、メキシコ、韓国、タイなど20か国以上が採用した。いずれもインフレ抑制目的での導入だった。ただ欧州中央銀行(ECB)は物価安定の目安として「2%以下で、その近辺」のインフレ率を参照値にしている。アメリカは連邦準備制度理事会(FRB)の暗黙値を物価上昇率の目安としているが、2013年現在のFRB議長バーナンキはインフレ・ターゲット論者として有名である。
日本では1990年代後半から2000年代初頭にかけて、深刻なデフレ経済から脱却するため、インフレ・ターゲットを導入すべきと、バーナンキ、経済学者のクルーグマン、竹中平蔵(へいぞう)らが主張した。これに対し、デフレ脱却のためのマネー供給は副作用を招くうえ、いったんインフレ・ターゲットを導入するとインフレ率を制御できなくなるとの批判がなされた。2012年(平成24)12月に発足した第二次安倍晋三政権は、緩やかなインフレによるデフレからの脱却を目ざすリフレーション政策(リフレ政策)を行うにあたり、インフレ・ターゲットを導入した。
[編集部]
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(本庄真 大和総研監査役 / 2007年)
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