量的緩和(読み)りょうてきかんわ

百科事典マイペディア「量的緩和」の解説

量的緩和【りょうてきかんわ】

中央銀行もしくは中央銀行にかわる政府部局が景気刺激のために採る金融緩和政策の一つ。金融緩和では通常は金利政策が中心だが,短期名目金利が0%にまで低下し政策金利の引き下げによる金融緩和が困難な場合には,量的緩和などにより大胆な金融緩和政策が導入されることがある。日本経済は日本銀行日銀)が低金利政策をとり続けていながら,デフレ状態を脱却できず,円高の影響も加わって不況感を抜け出せない状況が続いた。この間2001年から2006年に日銀は量的緩和を実施,最大35兆円のマネタリーベース(日銀から金融機関に流す金)を増加させたが効果は限定的なものであった。2012年12月に発足した第二次安倍晋三内閣は経済の再活性化を政権の第一目標としていわゆるアベノミクスを提起,日銀にさらなる金融緩和を迫った。2013年3月に就任した黒田東彦日銀総裁は,大胆な量的緩和を骨子とする金融緩和策を打ち出し,マネタリーベースを2012年末の138兆円から2014年末には270兆円と一気に倍増させると発表。投資信託や国債の買い入れ枠を大幅に緩和し,日銀は財務省発行額の7割,毎月7兆円という大規模な国債購入を実行し,2013年12月末には200兆円を突破した。この影響で当面の円安・株価高を実現したが,株価は乱高下しさらに世界的な株安を受けて下落傾向にある。デフレ状態からの脱却という量的金融緩和の目標については,2014年2月末の消費者物価指数(生鮮食品を除く)が前年同月比で1.3%となり,2014年1月の三大都市圏の地価公示価格は住宅地前年比0.5%,商業地1.6%上昇と,効果が出ているとの評価もあった。しかし,その後の消費増税に,原油価格下落などの影響が加わり,日銀目標としていた2年で2%上昇を達成するのは困難な見通しとなった。これを踏まえて日銀は2014年10月末,さらに30兆円の追加緩和策を発表したが,2015年1月時点でも物価は下落傾向にあり,国民の景況感も全体としては足踏み状態である。
→関連項目安倍晋三インフレターゲット

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日本大百科全書(ニッポニカ)「量的緩和」の解説

量的緩和
りょうてきかんわ
quantitative easing

景気刺激や物価・金融市場の安定のため、中央銀行が市場に供給する資金量の増加を目標に行う金融緩和策。量的金融緩和のほか、英語の頭文字をとってQEともよばれる。中央銀行が将来の金融政策の方向性を公表するフォワードガイダンスと並ぶ、非伝統的金融政策の一つである。通常、中央銀行は誘導目標とする金利(政策金利)を引き下げて金融緩和するが、ゼロ%が下限で、これ以上の金利引下げ(金融緩和)はできなくなる。一方、量的緩和では、かりに金利がゼロ%に張り付いても、資金量増加を目標とするため市場に潤沢な資金を供給でき、一段の緩和効果を期待できる。一般に中央銀行は国債や有価証券などを市場から買い入れて量的緩和を実施し、資金量の目標値として通貨供給量、当座預金残高、マネタリーベース(資金供給量)などを用いる。日本経済のデフレーション傾向が鮮明になった2001年(平成13)3月、日本銀行が当座預金残高を目標に実施した緩和策(2001年3月~2006年3月)が量的緩和の世界初の実施例とされる。

 リーマン・ショック後の世界金融危機とその後の景気後退に対処するため、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は2008年から2014年まで量的緩和に踏み切り、金融危機前に1兆ドルであった資金供給量を最大4兆ドルまで増やした。ヨーロッパ中央銀行(ECB)も2015年から2018年まで量的緩和を実施した。日本銀行も2013年4月から量的緩和の一つである「量的・質的金融緩和」を導入したが、物価が当初目標とした水準まで上昇せず、量的緩和の終了時期を見通せていない。量的緩和は消費や投資を刺激するほか、自国通貨安による輸出競争力の向上などを通じて、デフレ傾向を強める先進国経済の下支え効果があるとされる。一方で、大量に供給された資金が新興国や原油などの商品市場へ流入するため、新興国の通貨危機や資源価格の乱高下の一因になっているという指摘もある。

[矢野 武 2019年7月19日]

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デジタル大辞泉「量的緩和」の解説

りょうてき‐かんわ〔リヤウテキクワンワ〕【量的緩和】

中央銀行が、市場に供給する資金量を目標として金融緩和を行うこと。非伝統的金融政策の一つ。中央銀行は通常、短期金利を誘導目標として金融市場調節を行うが、すでに超低金利政策を実施し、政策金利を引き下げる余地がない状況の中で市場への資金供給を増やす必要がある場合に導入される。量的金融緩和政策。QE(quantitative easing)。→信用緩和
[補説]日本銀行はデフレ克服を目的として、平成13年(2001)3月から平成18年(2006)3月まで量的緩和政策を実施。民間金融機関の日銀当座預金残高目標を引き上げ、長期国債や資産担保証券、銀行保有株式の買い入れを行った。市場に潤沢な資金が供給されたことから、短期金利は0.001パーセントまで低下し、実質的なゼロ金利政策となった。また、量的緩和の導入に際して、日銀が、消費者物価指数(生鮮食品を除く)の前年比上昇率が安定的に0パーセント以上になるまで緩和策を継続すると約束したことから、時間軸効果が一定の効果を上げたとされる。→準備預金制度公開市場操作

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