安倍政権の経済政策の通称。「アベ」と「エコノミクス(経済)」を組み合わせた。デフレ脱却を目標に、日銀による大胆な金融緩和、機動的な財政出動、規制緩和など民間投資を喚起する成長戦略を「三本の矢」として推進。その後に「新三本の矢」として「強い経済」「子育て支援」「安心につながる社会保障」も打ち出した。
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安倍晋三(あべしんぞう)政権の経済政策の通称。2012年(平成24)末の第二次安倍政権発足前後に打ち出したアベノミクスと、2015年9月の自民党総裁選再選後に表明した新アベノミクスの二つがある。このことばは安倍とエコノミクスeconomicsを組み合わせた造語で、アメリカのレーガン政権が掲げたレーガノミクスにちなむ。
アベノミクスは「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の3政策を柱とし、これを「3本の矢」と称してデフレ経済からの脱却や、日本経済を本格的な成長軌道にのせることを目ざした。
大胆な金融政策では、日本銀行総裁に登用された黒田東彦(はるひこ)(1944― )が、2013年4月、金融市場へ供給するお金の量を大幅に増やす「量的・質的金融緩和(異次元緩和)」を断行し、2年程度を念頭に2%の物価上昇の実現を目標にした。
機動的な財政政策では、東日本大震災からの復旧・復興事業を中心に公共投資で景気を下支えした。
成長戦略では、農業、医療、雇用などの規制緩和とこれを地方に広げる地方創生特区の導入や、法人実効税率の引下げ、TPPなど自由貿易の推進、女性や外国人の活用などに取り組んだ。
アベノミクスは、財政的には成長による税収増で財政再建を目ざす「上げ潮派」に属し、金融的には緩やかなインフレを起こして景気をよくする「リフレ(リフレーションreflation)派」に属すると位置づけることができる。
2009年には7000円台まで下がった日経平均株価はアベノミクスによって一時2万円台を回復し、外国為替(かわせ)相場は大幅な円安となり、とくに民間企業の業績回復が鮮明となった。一方で、2%台の物価上昇目標は実現できていないうえ、人口減少が日本経済の成長力をそぎ、社会保障改革や格差対策に未着手であるとの批判を受けた。このため新アベノミクスでは、50年後も人口1億人を維持し、だれもが活躍できる「一億総活躍社会」を標榜(ひょうぼう)。これを実現する新3本の矢として「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」を打ち出し、それぞれ国内総生産(GDP)600兆円、希望出生率1.8、介護離職ゼロという数値目標を掲げた。これにより、経済成長を実現し、その果実を子育て支援や社会保障基盤の強化に投じることで労働参加率を高め、さらなる成長につなげる「持続的成長と分配の好循環」を目ざしている。
なお、アベノミクスの理論的支柱は、エール大学名誉教授の浜田宏一(1936― )、慶応大学教授の竹中平蔵(へいぞう)、嘉悦(かえつ)大学教授の高橋洋一(1955― )らが担っているとされている。
[矢野 武 2016年6月20日]
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(大迫秀樹 フリー編集者 / 2013年)
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