ツツジ科エリカ亜科の常緑低木。茎は多くの細い枝に分かれて株立ちとなり,多数のこまかな葉をもつ。葉は一般に3~6枚輪生し,線形で厚く,裏面に1本の深い溝がある。花は春から夏咲き,夏から秋咲き,冬咲きのものなど種類によってさまざまである。枝先に数個の花を輪生するか,多数の小さな花を散房状につける。萼は鐘形で4裂し花冠よりずっと短い。花冠は筒形,鐘形または壺形で先は浅く4裂し,中に8本のおしべと1個のめしべがある。多くは葯の背面にリボン状の付属物がある。果実は蒴果(さくか)で,多数の小さな翼のない種子がある。ヨーロッパからアフリカに分布し500種ほど知られ,とくに地中海沿岸と南アフリカに多い。荒地や岩地に生育し,ハイデソウとともにヒースを構成するおもな植物として知られる。
エリカ属Ericaの一部は観賞用として利用され,ジャノメエリカE.melanthera L.や早咲きエリカE.carnea L.などは耐寒性が強いので屋外でも栽培される。また白雪(しらゆき),栄冠(えいかん),栄樹(えいじゆ),風鈴(ふうりん),残雪(ざんせつ),常夏,紫光殿などいろいろな品種が日本名をつけて栽培され,初化粧(はつげしよう),桃園(ももぞの),紅輝(こうき),誉(ほまれ)など日本で作られた園芸品もあり,切花や鉢物に暖地や温室で栽培される。繁殖は実生,取木,株分けなどが行われるが9~10月に挿木をすることが多い。枝や葉の伸びる時期は十分,水や肥料をやって生長させ,夏以後は水をひかえて花芽をつけさせる。また地中海沿岸のE.arborea L.(英名brier)の根からはブライアー・パイプが作られる。
ヨーロッパ原産のハイデソウ一名ギョリュウモドキCalluna vulgaris (L.) Hull.(英名heather)はエリカの1種として栽培されるが,エリカ属ではない。萼が大きく4片に分かれて花弁を包み,紅紫色を帯びて花弁のように見え,萼のように見えるのは苞葉であるなどが異なる。
執筆者:山崎 敬
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ツツジ科(APG分類:ツツジ科)の常緑小低木。英名ヒース(heath)の名でも知られる。ヨーロッパ西部および地中海沿岸に14種、熱帯東アフリカに2種、亜熱帯東アフリカに9種、南アフリカに605種の原種がある。高さは20センチメートルくらいのものから3メートルに及ぶものもあり、横枝が多数出てこんもりするものや直立してスギのようになるものがある。葉は線形および卵形で短い。花は壺(つぼ)状または筒状で、総状花序もしくは散形花序をつくる。花期は晩秋から春までで、多くは横向きまたは下向きに咲き、まれに上向きに咲くものもある。花色は白、桃、赤、紫、黄など豊富で、2色が混じるものもある。弁先は普通4裂し、雄しべは普通8本。
ヨーロッパ系のものは耐寒性も強く栽培しやすいが、南アフリカの低地原産のものは花は美しいがやや半耐寒性のため保温を要する。重い土では根が深くまで伸びないので軽い土を用いる。また夏の高温による乾燥を避け、地温が上がりすぎないよう根際に覆いをする。灌水(かんすい)は適度にするとともに、南アフリカの品種については、6月と9月の多雨期の排水をよくする。大正初期にはカナリキュラタなど桃色と赤色の小花が多数つく品種が流行し、品種改良が進んだが、いまは絶滅している。現在栽培されるのはウィルモレイのほか南アフリカ系のものが多く、弁先が赤く白色筒咲きのレギア、花の底が赤く白色上向き咲きのファスティギアタ、濃桃紅色で横向き咲きのビスカリアなどがよく栽培される。また一般にはジャノメエリカ(メランセラ)がよく栽培される。切り花、鉢植え、庭園樹とする。繁殖は実生(みしょう)でよく育ち、2年目くらいで咲くものがあり、3~4月および秋に挿木をしてもよい。
[川畑寅三郎 2021年4月16日]
花木として栽培されるエリカの多くは、南アフリカからもたらされた。その最大の貢献者は、キュー王立植物園から派遣されたイギリスの植物学者フランシス・マッソンFrancis Masson(1741―1805)で、彼は1772年と1786年の2回の南アフリカの採集旅行で88種のエリカを採集し、イギリスに送った。日本には、大正年間にジャノメエリカが初めて導入された。またエリカの根は堅いので、地中海沿岸産のエリカのエイジュ(E. arborea L.)からはパイプがつくられる。
[湯浅浩史 2021年4月16日]
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…草本や蘚苔類・地衣類が優占する酸性土壌のやせた土地にも使うことがある。ヒースで有名なのは西ヨーロッパの沿岸部で,冷涼,湿潤で,冬が寒くない海洋性気候下のポドゾル化した貧栄養の酸性土壌の土地に広く分布し,南部ではエリカEricaの類やエニシダ類(マメ科)が目だち,北部ではハイデソウCalluna vulgarisが優占種である。そこでは,自然植生と考えられる高層湿原の乾性な土地や海岸の強風地を除いて,多くはもとは森林であったことが花粉分析からも知られ,家畜の放牧やそのための火入れがくり返されて成立したと考えられている。…
…草本や蘚苔類・地衣類が優占する酸性土壌のやせた土地にも使うことがある。ヒースで有名なのは西ヨーロッパの沿岸部で,冷涼,湿潤で,冬が寒くない海洋性気候下のポドゾル化した貧栄養の酸性土壌の土地に広く分布し,南部ではエリカEricaの類やエニシダ類(マメ科)が目だち,北部ではハイデソウCalluna vulgarisが優占種である。そこでは,自然植生と考えられる高層湿原の乾性な土地や海岸の強風地を除いて,多くはもとは森林であったことが花粉分析からも知られ,家畜の放牧やそのための火入れがくり返されて成立したと考えられている。…
※「エリカ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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