トンキンニッケイ(東京肉桂),ケイ(桂)ともいう。クスノキ科の常緑樹。樹高15m。葉は長さ12~15cm,つやのある緑色で,3本の葉脈が目だつ。小型の黄白色の花が小枝に多数つき,小粒の果実がみのる。中国南部やインドシナ半島に自生し,栽培もされる。枝や幹を切り外皮を去って,内皮だけをはいで乾燥したものもカシアといい,シナモンの代用とする。ときにはシナモンと称して売られることもある。菓子や料理にスパイスとして用いる。また漢方で薬用にする。カシアを蒸留してカシア油(桂皮油)を作り,薬用・香料に用いる。近縁種にスパイスとして用いられるものがいくつかあり,しばしば混同される。セイロンニッケイC.zeylanicum Neesが真正のシナモンで,カシアはこれに比べると粗野な風味で辛みが強く,セイロンニッケイのような甘みがない。ニッケイは日本でも栽培されるもので,幹の皮や根の皮が菓子に利用される。
執筆者:星川 清親
漢方ではカシアの樹皮やそのほか同属の若干の異種植物の樹皮および根皮が桂皮の名で用いられる。中国では桂枝(径1cm以下の枝)と肉桂(厚い幹皮)が使われたが,日本では区別せずに比較的薄い皮を桂皮と称する。精油の主成分はシンナムアルデヒドcinnam aldehyde,そのほかにタンニンを含む。他の生薬と配合して健胃,発汗,解熱,鎮痛薬として,中枢神経系の興奮を鎮静し,水分代謝を調節する働きがあり,感冒,身体の疼痛(とうつう)などに応用される。
執筆者:新田 あや
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
クスノキ科(APG分類:クスノキ科)の常緑高木。中国南部、インドシナ原産。高さ約12メートル、葉は表面に光沢があり3本の葉脈が目だつ。小さい黄白色の花が小枝に群がってつき、夏小粒の果実が実る。近縁のシナモンに比べると果実が小粒で、花期後も花被(かひ)が付着していることがあるのが特徴である。また同じく近縁のニッケイよりも果実が小さいが樹高はやや高い。カシアは別名トンキンニッケイといい、日本ではこれがシナモン(セイロンニッケイ)の代用品とされ、一般に肉桂(にっけい)、シナモンと称されて売られている。
[星川清親 2018年8月21日]
樹皮の外側を発酵させ、取り除かずに乾燥したものを別名肉桂、ニッキともよび、香味づけに使われる。さわやかな清涼感と甘味な香りに刺激性の甘味が溶け合った独得の風味を有する。成分は桂皮アルデヒド、オイゲノール、リナロールなどである。薬用にもされる。主成分の桂皮アルデヒドの含有量はシナモンの倍ぐらいあるので香りも強い。京都名物の八ツ橋や、ケーキ、ドーナツ、プディング、アップルパイなどには欠かせない香辛料である。また辛い料理にも広く使われ、カレー料理のたいせつな香味の一つでもある。
[齋藤 浩 2018年8月21日]
… さて雲南から中国南部,ベトナム北部にかけての肉桂種がある。キンナモムム・カシアCinnamomum cassiaを中心とし,シナ肉桂(カシア)と通称するものである。中国人が百薬の王者として認めたものであるが,彼らの使用は紀元前後からである。…
…【緒方 健】【新田 あや】。。…
…こうしてヨーロッパ人による大航海時代が展開されたのであるが,すべては南アジアのスパイス獲得と支配から出発したのであった。 と言えば簡単なようであるが,紀元前の古代オリエントとエジプトが,アラビア南部と東アフリカ奥地とつながりがあったのは,乳香,没薬(もつやく)と実体不明の肉桂(シナモン,カシア)のためである。紀元前後にローマ人,ギリシア人が,インド洋のモンスーンを利用しインド渡海を敢行したのは,胡椒を中心とするインドの薬物,化粧料,木綿,中国の絹などの獲得のためであった。…
…また葉からは丁子油に似た桂葉油が得られ,香料,薬用に用いる。中国南部からインドシナにあるカシア(ケイ)C.cassia Bl.からも良質の桂皮cassia barkが得られ,生薬ではこれがよく用いられる。中国では桂枝(径1cm以下の枝)と肉桂(厚い樹皮)が使われたが,日本では区別せずに比較的薄い樹皮を桂皮と称する。…
※「カシア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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