改訂新版 世界大百科事典 「ロッコ」の意味・わかりやすい解説
ロッコ
Alfredo Rocco
生没年:1875-1935
イタリアの法学者,政治家。大学で法学を教え,最初急進党に所属,次いでナショナリスト協会に加わって第1次大戦前後のナショナリズム運動の指導的理論家となる。個人の存在に対して社会体の優位を説き,また市民的活動より生産的活動を重視して職能別組織(コルポラツィオーネ)を軸とした社会編成を構想した。このため個人主義,自由主義を否定して国家権力の強化を唱えるとともに,資本家と労働者の階級闘争観を退け,両者が生産者概念のもとに単一の組合に組織される必要を訴えた。1923年ナショナリスト協会とファシスト党の合同でファシズムに移行し,下院議長を経て法相となる。法相在任中(1925-32)に結社活動を規制する法,政府首長に行政執行の全権を認める法,政府に立法権を認める法,死刑復活と特別裁判所の設置を定めた国家防衛法,集団的労働関係の規制に関する法(通称ロッコ法),ファシズム大評議会を国制の最高機関とする法,新刑法の制定など国家制度の根本にかかわる諸措置を講じた。これら諸措置は議会制にたつ自由主義国家の原理を廃棄するもので,ファシズム国家体制の確立をもたらしたが,ここには個々人を職業集団に組織し規律化し,国家の管理のもとに社会を秩序だてようとする彼の年来の構想が強く反映している。法相辞任後は,ローマ大学学長を務めた。
→ファシズム
執筆者:北原 敦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報