日本大百科全書(ニッポニカ) 「十七帖」の意味・わかりやすい解説
十七帖
じゅうしちじょう
中国、東晋(とうしん)の王羲之(おうぎし)の、主として草書の手紙を集めた法帖。名称は巻首に「十七日」の語があることによるが、すべて模刻で原本は伝えられていない。晩唐(ばんとう)の張彦遠(ちょうげんえん)の『右軍書記』によれば、太宗皇帝が収集した約3000紙の王の手紙を分類して1丈2尺の巻に編んだものの一つで、107行、942字、23帖よりなるという。張の見た墨蹟(ぼくせき)本はその後散逸し、現存するものは6帖が増入された29帖の刻本で、134行、1154字を数える。多くの刻本は、帖尾に「勅」の字を大書した館本と、賀知章(がちしょう)(659―744)の臨本を底本としたとされる賀監本との2系統に大別され、このうち前者に属する三井本および上野本(うえのぼん)がとくに優れている。書は臨写と模写を重ねたものであることを考慮する必要があるが、結体は正しく雄健重厚な趣(おもむき)があり、王の草書の代表作として古くから最上の範本とされてきたものである。
[筒井茂徳]
『『書跡名品叢刊21 十七帖』(1959・二玄社)』▽『宇野雪村他編『王羲之書蹟大系』(1982・東京美術)』