動物の体表をおおう上皮の下側に,その裏打ちをするように張る板状構造物をいう。細胞膜や,細胞内の膜とはまったく構造的に異なるので基底板basal laminaと呼ばれることが多い。厚さ約500~1000Åで,ムコ多糖類,膠原(こうげん)細繊維を含み,銀染色で黒く染まり,糖質の染色法である過ヨウ素酸シッフ反応periodic acid-Schiff reaction(別名PAS反応)では桃色に染まる。電子顕微鏡でみると,上皮細胞の細胞膜にそってその下に一定の間隔を隔てて中等度の電子密度のぼんやりした構造物として認められる。均質にみえるが,よくみると微細なフィラメントを含んでいる。年をとったり,ある種の病気にかかったりすると,厚さが増加するという。たとえば糸球体腎炎では,腎小体の毛細血管とたこ足細胞podocyteの間にある基底膜が厚くなったり断裂が起こったりする。基底膜の成分の一部を上皮細胞が作ると考えられている。このことは,ヒドロキシプロリンやヒドロキシリジンに3Hをくっつけた同位元素を動物に与え,オートラジオグラフを作ると上皮細胞で基底膜の成分であるタンパク質が作られ,基底膜のほうへ出されることによって証明される。
執筆者:藤田 尚男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
体表面や体内の諸臓器の内面を覆っている上皮組織の基底面は、結合組織によって裏打ちされているが、その基底面と結合組織との間には、光学顕微鏡で見ると無構造な薄い層が連続して認められる。これが基底膜とよばれるものであり、電子顕微鏡で調べると、この部分では、上皮細胞の底部に接するタンパク質と多糖類とに富んだ、基底板とよばれる層と、その外側に微細線維が密に走っている層があり、両者で基底膜を形成していることがわかる。現在では、基底板が、すなわち基底膜と考えられている。また、かつては内耳のラセン板を基底膜とよんだが現在は用いられていない。
[嶋井和世]
…特殊な分化をした上皮もあり,視覚,聴覚,平衡覚にあずかるものや,毛,つめ,水晶体のような特異的な物理学的性質を獲得したものがその例である。上皮の下には一般に結合組織があり,境界に基底膜がある。 支持組織は細胞間質に富み,細胞がそれに埋もれたように散在する骨,軟骨,結合組織などは,体や器官の形を保つ枠組として働いている。…
…蝸牛の断面をみると鼓室階,中央階,前庭階に分かれており,前庭階と鼓室階は蝸牛の頂上の蝸牛孔でつながっており,内部に外リンパを含む。中央階は蝸牛管ともいい,前庭膜(前庭階壁,ライスネル膜ともいう),血管条,基底膜(基底板,鼓室階壁ともいう)で囲まれており,内リンパを含む。内リンパを囲む組織を膜迷路という。…
※「基底膜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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