受渡し期日にかならず売買物件と代金との受渡しをしなければならず、転売や買戻しを行って差金(さきん)を授受して決済することが許されない取引。差金の授受による決済を認めるものを清算取引というが、この点で実物取引と清算取引は対照的である。実物取引は、現物売買、見本売買、銘柄売買の3形式によって行われる。現物売買による実物取引の典型は、魚市場や青物市場のような生鮮食料品等の卸売市場における取引である。そこでは、即日受渡しの条件で現物を見て競(きょう)売買(多数の売り手・買い手が一団となって取引する)が実施される。新鮮度を保つ短期間に多量の商品を適正価格で処理しなければならないからである。商品取引所では銘柄売買による取引が行われるが、実物取引は従であり、先物(さきもの)取引(将来の受渡し)による清算取引が主である。証券取引所における株式売買は、実物取引が原則である。
[森本三男]
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…株式の売買取引の決済において現金と株券との現物で受け渡す取引のことで,信用取引に対する言葉。清算取引に対しては実物取引というのが一般的であるが,いずれにせよ,その実態は同じである。株式取引における取引所取引は,売買してから決済されるまでの期間により,当日決済取引,普通取引,発行日決済取引,特約日決済取引に分けられるが,このうち現物取引は当日決済取引,発行日決済取引,特約日決済取引のほか,信用取引以外の普通取引が含まれる。…
…生鮮食料品や木材などは,それこそ一商品ごとに品質がばらついていて,その商品を実際に目で確かめないと評価が下せないものも少なくない。これらの商品は横の取引にはなじまず,具体的市場に実際に商品を持ち込む現物取引(実物取引ともいう)の形態の中で組織化を進めた。最初は売手と買手が1対1で価格や数量を話し合って決める相対(あいたい)方式だったろう。…
…このような信用取引により,いわゆる仮需給が証券市場に導入されると,実需給しか存在しない場合に比べて価格の急激な変動が防止され,公正な価格形成と株式取引の円滑化が促進される。このように信用取引は現物取引(信用取引に対するのが現物取引であるが,清算取引に対しては実物取引という。その実態は両者とも同じ)の補完作用をなすもので,1951年に信用取引制度が認められた意義もここにある。…
…取引所における売買取引の一種で,有価証券の清算取引と商品の清算取引とがある。実物取引(信用取引に対しては現物取引というが,実態は同じ)に対するもので,現物の引渡しのほか転売・買戻しによる差金決済もできる取引である。清算取引は現在商品取引所において先物取引という名称で行われているが,証券取引所での取引は,1945年の取引所再開に際してGHQの指示で禁止された。…
※「実物取引」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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