野菜、果実などの青果物を売買する市場。青果物市場ともいう。現在では一般に卸売市場(しじょう)をさす。日本では、1923年(大正12)の中央卸売市場法施行により、地方公共団体による各種生鮮食料品の卸売市場開設が進み、設備や組織が近代化された。現在は、1971年(昭和46)施行の卸売市場法により、生鮮食料品等を扱う市場は中央卸売市場および地方卸売市場に分けて規定されている。1980年代以降、消費生活の多様化と流通量増大、都市化による環境悪化などにより、既存青物市場の再開発や移転が課題になる事例が多い。
日本の青物市場は、奈良時代の京都における物々交換方式の東西市(いち)に始まるとする説もあるが、市場成立の前提条件である都市の成立と貨幣取引の定着が整う江戸時代初期に本格的に成立したとみるほうが適切であろう。江戸では、最古の駒込(こまごめ)のほか、神田(かんだ)、千住(せんじゅ)、本所(ほんじょ)、京橋、二本榎(にほんえのき)、品川などに青物市場ができたが、明治維新後、廃止・統合された。そのほか、大坂の天満市(てんまいち)、京都の不動堂市、流れ口市、中堂寺市、名古屋の枇杷島市(びわじまいち)などが有名である。江戸時代の青物市場は、株仲間の特権集団により運営され、新しい市場の開設や農民による直売をめぐっての争いが少なくなかった。「やっちゃ場」は青物市場を意味する東京の俗語であるが、せり売りの掛け声に由来するという説と、「野菜市場(いちば)」の転訛(てんか)とする説がある。
[森本三男]
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