蛍石型構造(読み)ほたるいしがたこうぞう(その他表記)fluorite structure

日本大百科全書(ニッポニカ) 「蛍石型構造」の意味・わかりやすい解説

蛍石型構造
ほたるいしがたこうぞう
fluorite structure

一般式AX2(Aは陽性元素、Xは陰性元素)で示される化合物にみられる結晶構造の一型式。蛍石CaF2の構造がそれで、カルシウムイオンが面心立方格子をつくり、その正四面体4配位位置8か所のすべてにフッ化物イオンが入り、等軸晶系(立方晶系)、空間群Fmmの構造となる。SrCl2、BaF2、CuF2、HgF2、ThO2、UO2なども蛍石型構造となるが、イオン半径比がこれらよりも小さくなるとルチル型構造になる。組成がA2Xとなって陽性元素と陰性元素との位置関係が逆転した構造を逆蛍石型構造antifluorite structureといい、Li2O、Na2S、Cu2Seなどがその構造をとる。

[岩本振武 2015年8月19日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「蛍石型構造」の解説

蛍石型構造
ホタルイシガタコウゾウ
fluorite type structure

蛍石CaF2に代表される,組成がAB2で示される無機化合物にみられる典型的な結晶構造の一つ(図参照).立方晶系空間群Fm3mに属し,単位格子中に4化学単位が含まれる.A原子は面心立方格子の各格子点を占め,B原子は単位格子を8等分した小さな立方体の中心に位置する.A原子は8個のB原子で囲まれ,B原子は4個のA原子により正四面体的に配位される.Aが金属元素,Bが非金属元素の場合に蛍石型構造とよび,蛍石CaF2のほかにSrF2,SrCl2,ZrO2,ThO2などがこの構造をとる.陰イオン格子欠陥が生じると高温でイオン伝導性を示す.また,Aが非金属元素,Bが金属元素の場合には逆蛍石型構造とよび,Li2O,Li2S,Na2Sなどがこの構造をとる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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