オヨギイソギンチャク(読み)およぎいそぎんちゃく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オヨギイソギンチャク」の意味・わかりやすい解説

オヨギイソギンチャク
およぎいそぎんちゃく / 泳磯巾着
[学] Boloceroides mcmurrichi

刺胞(しほう)動物門花虫(はなむし)綱六放サンゴ亜綱イソギンチャク目オヨギイソギンチャク科に属する海産動物。本州中部以南、西太平洋およびインド洋海域に広く分布する。体は円筒形で、大きいものでは高さ10ミリメートル、径5ミリメートルになる。触手は甚だ長大で、大小あわせて40~50本を備え、大きいものでは長さ3センチメートルにもなる。触手が大きく数も多いため、触手の塊のようにみえ、一見、体がどこにあるのかわからないことが多い。触手および隔膜は無性分裂のため著しく不規則に配列する。隔膜糸の内端は三叉(さんさ)状の繊毛帯を有する。足盤はあるが足盤筋を欠く。共生藻のため褐色で、触手および口盤も褐色で半透明である。各触手の基部を取り巻くように環状筋をもち、刺激を受けるとこれを急に縮めることによって、触手を自切する。触手環の基部より出芽したり、触手がちぎれて一個体のイソギンチャクに再生したりする。内湾アジモの繁茂する所などに生息し、海藻上に付着しているが、ときとして触手を打ち振って泳ぐことがある。

[内田紘臣]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オヨギイソギンチャク」の意味・わかりやすい解説

オヨギイソギンチャク
Boloceroides mcmurrichi

刺胞動物門花虫綱六放サンゴ亜綱イソギンチャク目オヨギイソギンチャク科。泳ぐことで有名なイソギンチャク。体高は大きなものでも 1cm,幅 5mmほどであるが,触手は長さが 3cmほどで,大小 40~50本ある。各触手のつけ根に環状筋があり,刺激を受けると,これを急に縮めて触手を自切する。体壁は黄褐色で薄い。共生藻(→共生)のために触手は黄褐色,または紅色を帯びることがある。普通はアマモの葉の上に付着しているが,触手を動かして泳ぐこともある。無性生殖によって体壁から新個体を出芽して増える。本州中部以南,西太平洋,インド洋の内湾に広く分布する。(→イソギンチャク類刺胞動物花虫類無脊椎動物

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改訂新版 世界大百科事典 「オヨギイソギンチャク」の意味・わかりやすい解説

オヨギイソギンチャク
Boloceroides mcmurrichi

花虫綱オヨギイソギンチャク科の腔腸動物(刺胞動物)。ふつうは内湾に生えているアマモの葉の上に付着しているが,触手を動かして泳ぐことができ,体制が原始的なことと合わせて世界的に有名な種類である。本州太平洋岸からアフリカ沿岸まで広く分布する。体の高さは大きなもので約1cm。触手の長さは約3cmで,体の割りには長く,多くの触手が群生する。触手の細胞内に共生藻類がすみ,そのために黄褐色や紅色のときが多い。体に触れると簡単に触手が落ち,その触手から全体が再生し,また体側より無性的に出芽して群体をつくる場合もある。
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世界大百科事典(旧版)内のオヨギイソギンチャクの言及

【イソギンチャク(磯巾着)】より


[生殖]
 生殖には無性生殖と有性生殖とがある。無性生殖ではタテジマイソギンチャク,ヒオドシイソギンチャクのように,体が縦に分裂して2個体になるもの,またオヨギイソギンチャク(イラスト)のように触手の基部から出芽して大きくなり,やがて親から離れていくものもある。有性生殖では,胃腔内の生殖巣から精子あるいは卵子が海水中に放出される。…

※「オヨギイソギンチャク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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