チゴザサ(英語表記)Isachne globosa (Thunb.) O.Kuntz.

改訂新版 世界大百科事典 「チゴザサ」の意味・わかりやすい解説

チゴザサ
Isachne globosa (Thunb.) O.Kuntz.

少し郊外の湿地,溝の中などに群生するイネ科多年草和名稚児笹は小さい葉に由来するという。茎は細くやや硬く,基部ははって地下茎となり,節から根を出し,上部は立ち上がってまばらに枝分れし,高さ30~50cmになる。葉は披針形または短い線形で,長さ4~7cm,幅は6mmくらい,質はやや硬く,先はとがり,毛はない。6~8月,茎の頂に長さ3~6cmのまばらな円錐花序を出す。花序の枝は細く,数回分かれて小枝を出し,小型の小穂を星をちりばめたようにつける。小穂は広楕円形で,長さは2mmくらい,先は円く,開花時には紫色の羽毛状の柱頭が現れて美しい。小花は2個で双方とも果実ができる。北海道の渡島半島以南の全日本から,中国,東南アジア,インドネシア,オーストラリアと分布が広い。マレーシアやインドネシアでは,若い穂を食用にし,飼料にもなる。近縁ハイチゴザサI.nipponensis Ohwiはチゴザサに似て丈が低く,茎は地上をはい,山間の湿地に生える。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「チゴザサ」の意味・わかりやすい解説

チゴザサ
ちござさ / 稚児笹
[学] Isachne globosa (Thunb.) O.Kuntze

イネ科(APG分類:イネ科)の多年草。稈(かん)は高さ30~60センチメートル、地上をはう走出枝がある。葉は狭披針(きょうひしん)形で長さ4~7センチメートル。6~8月、稈頂に長さ3~6センチメートルで、小穂柄に淡黄色の腺体(せんたい)がある円錐(えんすい)花序をつける。小穂は長さ2~2.2ミリメートル、ほぼ同じ大きさの2小花があり、ときに汚紫色を帯びる。包穎(ほうえい)は背面が半球形に膨らみ、先は鈍くとがる。北海道から沖縄の湿地、水辺、田んぼに群生し、中国、東南アジア、オーストラリアに分布する。名は、葉がササに似るが、ごく小さいのでいう。近縁種にハイチゴザサがある。

[許 建 昌 2019年8月20日]


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世界大百科事典(旧版)内のチゴザサの言及

【ネザサ(根笹)】より

…鉢植えとしたり,根じめや土どめに利用する。またケネザサ系の園芸品種には,チゴザサ(稚児笹)cv.Fortuneiがある。小型で葉に白または黄色の縦じまがあって美しい。…

※「チゴザサ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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