精選版 日本国語大辞典 「下・卸・颪」の意味・読み・例文・類語
おろし【下・卸・颪】
〘名〙 (動詞「おろす(下)」の連用形の名詞化)
② 神仏の供え物をとりさげたもの。また、貴人の飲食物の残りや使い古しの品物のおさがり。御分(おわけ)。
※宇川共有文書‐慶長一一年(1606)三月二七日「升はかなふせ以おろしに可レ進レ之候」
※古今(905‐914)秋下・二八五「こひしくはみてもしのばんもみぢばを吹きなちらしそ山おろしのかぜ〈よみ人しらず〉」
⑤ 身分、地位などを低くすること。
⑥ 自然に出産する時期より前に、人為的に子を母体の外に出すこと。また、その子。子おろし。おろし子。
※新羅社服忌令(1425)「百日。下子(ヲロシ) 三个月以前七日、四个月以後三十日」
⑦ (大根やわさびを)すりくずすこと。すりくずしたもの。また、すりくずす器具。おろしがね。
※羅葡日辞書(1595)「ダイコンノ voroxi(ヲロシ)」
⑧ ゆったりとねり歩くこと。おろしあゆみ。
※浮世草子・傾城仕送大臣(1703)三「かれが風俗仕出し、いかさま天職のおろしの様に見え」
⑨ 上下に上げ下ろしして開閉する戸。おろし戸。
※天草本平家(1592)四「ヲツボネノ voroxiuo(ヲロシヲ) ホトホトト タタケバ」
⑩ 邦楽用語。
(ロ) 舞事(まいごと)の中の楽句の一つ。笛が特殊な演奏をする部分をいう。大、小の鼓(つづみ)も特有の演奏をする。
(ハ) (声を低めてうたうところから) 浄瑠璃で、序詞の終わりの一区切を語る節。荘重にゆっくりと語り、浄瑠璃本では節の出をの印で示す。特に大序のものを「大おろし」、おろしほど重くはないがよく似た節を「おろしかかり」という。
※浮世草子・元祿大平記(1702)二「上瑠璃本をとりなやみ〈略〉をろし、三重、いろ、うつり、はつは、そををとばかりにて、療治の事はおろそかに」
⑪ 新しい品を使い始めること。また、その品。「したておろし」
⑫ (卸) 商品を問屋から小売商へ売り渡すこと。おろし売り。
※和英語林集成(初版)(1867)「Oroshi(オロシ)ト コウリワ ネダンガ チガウ」
⑬ 海を渡って近くの島などに船で行き来すること。また、その船。
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