朝日日本歴史人物事典 「中村歌六(初代)」の解説
中村歌六(初代)
生年:安永8(1779)
江戸後期の歌舞伎役者。俳号梅枝,屋号播磨屋。大坂三井の番頭丹波屋甚助の子。3代目中村歌右衛門の門弟。初名中村もしほで子供芝居に出,中芝居の修業を重ねて歌六と改名。文化2(1805)年,27歳で初めて大芝居に登場。大柄で器量よく声美しく評判だった。おいおい大役をこなし,49歳で若女形上上吉となった。衣裳を常に華美に拵え,傾城役,女賊役などで大当たりをとり,通称傾城歌六。琴の上手で「信州川中島合戦」のお勝は生涯の当たり役だった。女形ながらタテの名人で,愁い事も上手だった。三都に人気高く,中芝居にも旅にも自由に出て,81歳で死ぬ前月まで舞台に立ち,なお美しかったという。
(青木繁)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報