南伝大蔵経(読み)なんでんだいぞうきょう

精選版 日本国語大辞典 「南伝大蔵経」の意味・読み・例文・類語

なんでん‐だいぞうきょう ‥ダイザウキャウ【南伝大蔵経】

〘名〙 パーリ語で書かれた仏教聖典総称。紀元前一世紀頃インドからセイロン上座部に伝わったもので、スリランカ(セイロン)・ミャンマービルマ)・タイなど南方仏教圏で用いられている。日本語訳(六五巻)がある。パーリ語三蔵。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「南伝大蔵経」の意味・わかりやすい解説

南伝大蔵経
なんでんだいぞうきょう

南・東南アジアに広がる上座部(じょうざぶ)(テーラワーダTheravāda)仏教の聖典を、パーリ語から現代日本語に翻訳したもの。65巻70冊からなる。原典としてのパーリ語聖典は、紀元前3世紀インドのアショカ王時代に編集され、前1世紀セイロン(現スリランカ)で初めて文字に筆写されたと伝えられる。大乗系のサンスクリット仏典、チベット大蔵経、漢訳大蔵経と異なり、一部派の伝持したものではあるが、聖典語としてのパーリ語を使用し、経(きょう)、律(りつ)、論(ろん)の三蔵を完備しているため、最初期の純粋な仏教を知るうえで唯一不可欠の資料にもなっている。スリランカをはじめとするミャンマー(ビルマ)、タイなどの上座部仏教圏においては自国の文字を用いて、また一方、ヨーロッパでは19世紀後半よりロンドンのパーリ語聖典協会Pāli Text Society(略称PTS)からローマ字によって聖典の厳密な校訂出版が行われた。

 わが国ではローマ字本に基づき、1935年(昭和10)から41年にかけて高楠(たかくす)順次郎博士功績記念会のもとで、斯界(しかい)の学者約50人が和訳を完成させ、これを「南伝大蔵経」と名づけて刊行した。その内容は、修行僧の個人・集団の実践生活規定をその制定因縁話とともに収めた律蔵(第1~5巻)、仏(釈尊(しゃくそん))の教法を話の長短、性格によって分類し網羅した経蔵(第6~44巻)、教法を分析的・哲学的に解釈し整理した論蔵(第45~58巻)、およびやや後期に属する聖典の一部、論書、史書碑文など(第59~65巻)からなる。

[片山一良]

『高楠順次郎博士功績記念会編『南伝大蔵経』(1970~74・大蔵出版)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「南伝大蔵経」の意味・わかりやすい解説

南伝大蔵経
なんでんだいぞうきょう

パーリ語によるセイロン上座部の伝えた仏教の重要な典籍を日本語訳した一叢書の名。高楠順次郎博士功績記念会によって 1935年に第1巻が出版され,41年に完成した。 65巻,70冊。律蔵,経蔵,論蔵が網羅されているばかりでなく,『ミリンダ王の問い』『島王統史』などの貴重な資料が翻訳されている。

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