デジタル大辞泉
「指南車」の意味・読み・例文・類語
しなん‐しゃ【指南車】
車の上に人形が装置され、車が移動しても人形の手は常に南を指すように作られたもの。中国古代の黄帝の作とも周公の作ともいわれる。
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
しなん‐しゃ【指南車】
〘名〙
① 古く中国で用いられた方向をさし示す装置を設けた車。車の上に人形を置き、その人形の手がいつも南をさすようにつくられたものという。
一説に、
磁針を車上に装置しただけの車とも。黄帝が
戦闘で使用したとも、周公が初めてつくったともいわれる。〔色葉字類抄(1177‐81)〕 〔古今註‐輿服〕
※山名家犬追物記(15C中‐後)「一切武道武芸の
指南車と奉存者也」
[語誌](1)「
書紀‐斉明四年一一月」には「沙門智踰造指南車」とあり、「指南車」は、北野本訓では「指
去南
上ノ車を」とあって、「シナムノくるま」と訓んでいたことが知られる。
(2)
磁石の指極性を初めて問題にしたのは、後漢の
王充「
論衡」とされる。日本では磁石は北を指すというが、古く中国では南を基準にする習慣があったため、「指北」ではなく「指南」となった。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
指南車 (しなんしゃ)
zhǐ nán chē
古代中国の方角を示す車。3世紀前半の三国時代に馬鈞が造り,晋以降皇帝の行列に加えられた。《古今注》によると,はるかに古く黄帝が蚩尤(しゆう)を討伐したとき,蚩尤は霧をまき起こして黄帝の軍隊を苦しめたが,黄帝は指南車を造って軍隊に方角を知らせたという。正確な指導を意味する〈指南〉の語の由来である。しかし,この伝説により,指南車は磁石と混同されたことがあったが,これはまったく別物である。車上に人形が置かれ,あらかじめ南向きにセットされた人形は車の方向が変化しても,歯車仕掛で人形の向きが変わらないくふうが施されている。
執筆者:藪内 清
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
指南車
しなんしゃ
古代中国でつくられた方向を指し示す車。その発明については、中国の伝説上の人物である黄帝が蚩尤(しゆう)を攻めた際、彼の軍隊が霧の中で方向を見失ったが、黄帝が指南車をつくって方角を知り、蚩尤を滅ぼした、と伝える。左右2輪の車の上に、その両輪に連動するようにつくられた数個の歯車を入れた箱がのせられ、さらに歯車箱に連結する垂直な軸上に木製の人形が置かれた。最初、人形に南をささせておくと、以降は車の進行方向が変わっても、歯車の仕掛けによって人形はつねに南をさし続けるようになっており、磁石などは利用していない。漢(かん)の張衡(ちょうこう)や三国時代の馬鈞(ばきん)らも製作したとされ、祖沖之(そちゅうし)は木製から銅製に改めた。『宋史(そうし)』の「輿服志」(1027)には指南車の記事がある。
指南車が南をさして人を導いたことから、指南の語は、手引き・案内の意となり、さらに技芸を指導・教授する人を指南番・指南役などというようになった。
[内田 謙]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例