改訂新版 世界大百科事典 「水野成夫」の意味・わかりやすい解説
水野成夫 (みずのしげお)
生没年:1899-1972(明治32-昭和47)
実業家。静岡県出身。1924年東京帝国大学法学部を卒業。25年共産党再建ビューローに参加し,野坂参三の産業労働調査所に入った。27年党中央事務局主任となるが,28年三・一五事件で検挙され,29年獄中で転向する。保釈後,30年日本共産党労働者派を組織し,コミンテルンに盲従して,君主制の廃止を主張する共産党を批判したが,大衆化できずに32年解党した。この後,文学に転じ,A.フランスの《神々は渇く》,A.モーロアの《英国史》などを訳し,ベストセラーになった。40年大日本再生製紙株式会社の副社長となり実業界入りをした。国策パルプ工業(現,山陽国策パルプ)との合併後は副社長,社長,会長を歴任した。また,1956年には文化放送,57年フジテレビ,58年産経新聞社の社長に就任し,フジ・サンケイグループの基礎を築いた。彼は,1950年代後半の労働組合攻勢の時期にあって,元共産党員としての経験を生かした労働対策を示し,財界長老の信頼をえた。
執筆者:黒田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報