阿波志(読み)あわし

日本歴史地名大系 「阿波志」の解説

阿波志
あわし

一二巻一二冊 佐野山陰編

成立 文化一二年

原本 後藤雅章

解説 徳島藩儒員佐野山陰(之憲)が編集した藩撰の地誌。全一二巻からなり、巻一は阿波国の総説、巻二は城府(徳島城下)、巻三は板野郡、巻四は阿波郡、巻五は美馬郡、巻六は三好郡、巻七は麻植郡、巻八は名東郡、巻九は名西郡、巻一〇は勝浦郡、巻一一は那賀郡、巻一二は海部郡の地誌を収める。内容はたとえば巻二の城府では目次の後に絵図を載せ、坊名・諸坊戸口山川・関梁・楼閣・土産・祠廟仏刹古蹟・塚墓・氏族の順で記されている。寛政四年佐野山陰は一一代徳島藩主蜂須賀治昭より「阿波志」編集御用に任じられ、同一〇年国内を巡見し資料を集めた(「成立書并系図共 佐野原吉」徳島大学附属図書館蔵)。だが編纂にあたっては、同五年国内の各村・浦・町の役人に命じて沿革・田畑・租税・戸口・山河産物社寺・古蹟・人物などの調査・差出を命じており、当書に記される数値等は寛政五、六年から同一〇年頃のものと思われる。諸本があるが、後藤家本は蜂須賀家旧蔵のもので、「蜂須賀文庫」の朱印がある。徳島県立図書館所蔵呉郷文庫本は明治三一年に小松島市金磯町の多田勝太郎が蜂須賀家本から写したものを同四五年忌部神社神主斎藤普春が写したもので、「阿波国文庫」印が押されている。県指定文化財。

活字本 「阿波誌」

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「阿波志」の意味・わかりやすい解説

阿波志
あわし

阿波徳島藩の儒員藤原之憲(しけん)によって完成した藩撰(はんせん)の地誌。1815年(文化12)成立。各町村の役人に命じて、その沿革、耕地貢租、戸口、自然、産物、寺社、古跡、城跡、主要人物などを書き上げさせ、これを集大成している。当時の徳島藩は財政的に窮迫しており、とくに農村支配の立て直しを急務としたこともあって、この編纂(へんさん)には施政上の大きな期待がかけられていた。私的に編纂された『阿波志抄』『異本阿波志』『阿府志』とともに貴重な史料となっている。

[三好昭一郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「阿波志」の意味・わかりやすい解説

阿波志
あわし

阿波国 (徳島県) 一円の地誌。 12巻。徳島藩の儒者佐野山陰の編著。文化 12 (1815) 年刊。編者が藩命により各村の庄屋らに命じて,管内の地誌を撰進させ,これを整理したもの。

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