デジタル大辞泉
「差出」の意味・読み・例文・類語
さし‐で【差(し)出】
1 突き出ていること。また、そのもの。
2 「差し出口」の略。
「言はれぬ―か知らねども」〈浄・会稽山〉
3 「差し出者」の略。〈日葡〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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さし‐だし【差出】
- 〘 名詞 〙
- [ 一 ] 下位の者から上位の者へ提出すること。
- ① 中世、大名が、領内の家臣にそれぞれの土地の面積、年貢などを調査させた報告書。また、戦国大名などが行なった差出検地。
- [初出の実例]「兵庫辞退之間、可有直務旨加下知、仍指出到来」(出典:大乗院寺社雑事記‐長祿四年(1460)九月一二日)
- ② 江戸時代、幕府直轄地の代官が、御取箇帳(年貢収納帳)をはじめ、勤方帳、村鑑帳など諸帳面、諸伺書を勘定奉行所へ提出すること。
- [初出の実例]「都而御殿御勘定所え御差出有之候諸書付其外等」(出典:牧民金鑑‐二・諸伺書・文化一一年(1814)七月一二日)
- ③ 江戸時代、他支配・他領の人民を相手取って奉行所に訴え出るとき、原告の属する代官、寺社、領主へ出願して、まず受訴奉行所へその訴訟を進達してもらう手続。また、その際受訴奉行所へ提出された訴訟の要旨を簡単に記した紙片。〔政普集‐乾(古事類苑・法律五六)〕
- ④ 江戸時代、領主、地頭、代官などが、自分の手元で裁判できない犯人、その他事件関係者を、幕府の命により口書(くちがき)、証拠書類など一件書類を添えて、幕府の管轄奉行所へ引渡すこと。〔評定所留役勘定勤方(江戸中か)〕
- ⑤ 江戸時代、訴訟当事者が指定された日に裁判所に出頭する旨を記した届書。
- [初出の実例]「初て公事合に相成、御評定請に御掛り被二罷出一候節、差上候差出認方之事」(出典:地方落穂集(1763)一四)
- [ 二 ] 前方へ差し出すこと。
- ① 手に持った物を前へさし出すこと。
- [初出の実例]「ことにあふぎのさし出しきやうなる所あり」(出典:評判記・難野郎古たたみ(1666頃)花崎龍左衛門)
- ② 母屋(もや)からさしかけに張り出した店。
- ③ 芝居で、舞台上の役者の顔をよく見せるために、二人の後見がもつ長い柄の燭台の先に点火した蝋燭(ろうそく)。つらあかり。
- [初出の実例]「芝居の人、手に指出しをもって」(出典:滑稽本・戯場粋言幕の外(1806)下)
さし‐で【差出】
- 〘 名詞 〙
- ① 手を差し出すように、陸地が水上に突き出ていること。
- ② でしゃばりであること。また、でしゃばって言うことば。
- [初出の実例]「Saxideuo(サシデヲ) ユウ」(出典:日葡辞書(1603‐04))
- 「この三太丁稚が差出(サシデ)をしたと」(出典:歌舞伎・色一座梅椿(1812)四幕)
- ③ でしゃばりな人。さしでもの。〔日葡辞書(1603‐04)〕
- [初出の実例]「向後そちが受領には口松の差出の頭佐平次と」(出典:浄瑠璃・妹背山婦女庭訓(1771)三)
さし‐いで【差出】
- 〘 名詞 〙
- ① 出すぎること。さしでがましいこと。でしゃばり。
- [初出の実例]「すべてさしいでは、わらはもおとなもいとにくし」(出典:枕草子(10C終)二八)
- ② 出ること。出仕すること。
- [初出の実例]「此ほどと成てはさしいでもはかばかしくもし給はで」(出典:苔の衣(1271頃)二)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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世界大百科事典(旧版)内の差出の言及
【歌舞伎】より
…黒塗りの竹棒に針金をつけ,その先に動物の小道具をつけ,後見が操作する。 差出し(さしだし)照明具。電気のない時代,花道の俳優を照らすための照明用具。…
【舞台照明】より
…劇場の見物席,両側の桟敷上方に役者の名前などを書いてつるす〈場吊り提灯〉などその慣習は今も劇場に伝わっているが,提灯の灯具の機能・特性からは,舞台全体に光を与える全体照明としての効果は少なかった。むしろ部分照明のための携行用の灯具として角形の燭台に長い柄をつけた〈面明(つらあかり)〉または〈差出し〉と呼ばれる灯火用具が舞台や花道の役者の表情を強調する手法として用いられた(具体的には2人の後見(こうけん)が前後から差し出して照らす)。舞台上での蠟燭,カンテラの使用は,しばしば劇場火災を引き起こしたので,法令では禁止されることが多かった。…
【手紙】より
… 都のように当人どうしの対面が自由な狭い地域では,使者もまた熟知の者であったため,使者口上の覚書のような用件のみ,歌のみでも事足り,足らぬことは使者の補足で間に合った。距離・時間を要し面談の不自由な場合は,両者の確認に差出し(発信人),宛名(受取人)を記し,日時の経過(年月日付)も勘案されることになり,本文以外にこの3項が要求される。とくに謀書(ぼうしよ)(偽書),謀判(ぼうはん)のありうる鎌倉時代以降には,発信人の真なることの証明も必要とされ,その人独自の模倣しがたい自署([花押](かおう))が創出される。…
※「差出」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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