デジタル大辞泉
「一円」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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いち‐えん‥ヱン【一円】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① 完全であること。完全に行なうこと。すべて。
- [初出の実例]「一円深理燈前聴、万法皆空涙裏知」(出典:本朝無題詩(1162‐64頃)一〇・遊山寺談僧〈藤原実光〉)
- ② ある地域全体。
- [初出の実例]「内一段卅六歩宅地、一円知行之者也」(出典:吉田文書‐延長七年(929)一一月二七日・豊受大神宮司解)
- 「件別符者、本為二一円御神領一」(出典:豊前永弘文書‐弘安二年(1279)二月日・宇佐保広申状案)
- ③ 貨幣の単位。一銭の百倍。
- [初出の実例]「或人は十銭を以て一円(いちヱン)の十分一と解釈し」(出典:虞美人草(1907)〈夏目漱石〉一二)
- [ 2 ] 〘 副詞 〙
- ① ( 「に」を伴う場合が多い ) すべて。ことごとく。
- [初出の実例]「於レ為二神領内一者、一円に可二宛催一也」(出典:常陸税所文書‐建久五年(1194)二月一五日・源頼朝下文案)
- 「多喜の庄をば、一円に給はるべし」(出典:平治物語(1220頃か)下)
- ② ( 「に」を伴って ) 一心に。専一に。ひとすじに。
- [初出の実例]「只一円に人の物を取給ひしも今はかなはず」(出典:御伽草子・三人法師(室町末))
- 「Ichiyen(イチエン) ni(ニ) コノ コトヲ ツカマツラウズ」(出典:日葡辞書(1603‐04))
- ③ ( まれに「に」を伴う。あとに打消の語を伴って用いる ) いっこうに。さらに。少しも。
- [初出の実例]「ソレワ イマコソ サヲウセラルルトモ、ychiyen(イチエン) ソノ、ブン デワ ナカッタ」(出典:天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事)
- 「男一円同心せず、その子細を是非に申せと聞きかかる」(出典:浮世草子・武家義理物語(1688)四)
一円の語誌
( 1 )平安時代では、名詞としての用法が中心であった。鎌倉初期から、副詞用法の兆しが見られるようになり、次第に程度副詞として定着していく。
( 2 )中世後期から江戸初期にかけては、程度副詞から陳述副詞へと用法を転じ、文末に否定表現を伴うことによって、その意味は「ことごとく」から「一向に、全く」に逆転した。
( 3 )江戸初期以降は、副詞の用法は次第に衰退し、現在使用されているのは「近畿一円」のような名詞用法だけとなった。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例
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