精選版 日本国語大辞典 「魅せられたる魂」の意味・読み・例文・類語
みせられたるたましい ミせられたるたましひ【魅せられたる魂】
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フランスの作家ロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』に続く大河小説。『アンネットとシルビ』(1922)、『夏』(1923)、『母と子』(1927)、『予告する者』(第一部『一つの世界の死』1932、第二部『出産』1933)からなる。自分の魂をたいせつにする主人公アンネットは婚約者の子を宿したまま離別。父なし子マルクの誕生と財産管理人の不始末による破産は、彼女に「勤労と貧困」を教え、その目を個人から社会へと向けさせる。新聞経営者チモンとの出会いを契機に開かれる国際的視野、イタリア人ブルーノとの交友によって知るインドの無抵抗主義、わが子マルクとその妻アーシャを通して近づく革命主義、いっさいが彼女のなかで人類愛を根底に渾融(こんゆう)し、反ファシズム、反帝国主義運動の原動力となっていく。富裕な中産階級の娘から母として、女性として、政治的、社会的虚偽を見破り、妥協を拒否し続ける彼女の死は、「松明(たいまつ)を掲げる宇宙の母」の死であった。
文学的にあまたの欠陥が指摘されるが、第一次世界大戦を挟む動乱期のフランス社会を背景に、独立する女性の正しい生き方を描き出した作品として価値は大きい。
[中條 忍]
『宮本正清訳『魅せられたる魂』全10冊(岩波文庫)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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