日本大百科全書(ニッポニカ) 「アウトソーシング」の意味・わかりやすい解説
アウトソーシング
あうとそーしんぐ
outsourcing
ある組織がその事業や業務の一部を、外部の専門組織へゆだねること。「外部委託」「外製化」「外注化」ともよばれる。子会社への業務委託を含めることもある。対義語はインソーシングinsourcing(内製化)。アウトソーシングのうち海外に委託することをオフショアリングとよぶ。もともとアウトソーシングは情報システムの構築・運用・保守などを外部の専門企業に任せることから始まったが、現在では、製造、研究・開発、物流、営業、人事・教育、経理、施設管理、福利・厚生など多くの事業分野が対象となっている。アウトソーシングには、(1)外部発注することで人件費や専門設備などのコストを削減できる、(2)自社で行うよりも専門業者の高度な技術やノウハウを活用できる、(3)人材や経営資源を主力業務に集中することで有効活用できる、などの利点がある。一方、(1)経営情報、技術、ノウハウが外部へ漏れるおそれがある、(2)社内にノウハウが蓄積できない、などのデメリットもある。この欠点を補うためアウトソーシングを発展させた契約形態に、業務を委託する側と受託する側が対等の立場で共同作業にあたる「コ・ソーシングco-sourcing」がある。コ・ソーシングは共同で作業にあたるため外部への技術・情報漏洩(ろうえい)の可能性が低いほか、技術やノウハウを社内に継続的に蓄積できる利点がある。これにより想定以上の利益が出た場合には、委託側と受託側で利益を分配する。2000年代に入って内外の企業が異業種間でコ・ソーシングを結ぶ事例が増えている。また事業や業務ごとにもっとも適した外部の専門組織を選び、複数の専門組織と委託契約を結ぶことをマルチソーシングmultisourcingとよぶ。複数の組織と契約するため、事業の丸投げに陥ることなく、コスト管理が徹底される利点がある。
なおIT分野のアウトソーシングをITO(IT outsourcing)、人事、経理、事務処理などのアウトソーシングをBPO(business process outsourcing、業務プロセス委託)とよぶほか、医薬品開発や航空機設計などの知的業務の委託をKPO(knowledge process outsourcing、知的業務委託)ということもある。最近は、インターネットを利用して不特定多数の人々(群衆)にサイト画面作成やデータ入力業務などを任せるクラウドソーシングという手法が普及している。
[矢野 武 2015年5月19日]