アオギス(その他表記)Sillago parvisquamis

改訂新版 世界大百科事典 「アオギス」の意味・わかりやすい解説

アオギス
Sillago parvisquamis

スズキ目キス科の汽水魚。別名ヤギス。東京湾で釣師はかつて大きさにより,三年ヒネ,四年ヒネ,五年ヒネなどと呼んだ。アオギスの名はキス(シロギス)に比べ,背部が青緑色みが強いことによる。体は細長い円筒形で,第2背びれの各軟条前縁に沿って前方では7個,後方にいくにしたがって減り後ろでは1個の小黒点列があり,腹びれしりびれの前縁が黄白色である。全長50cmに達する。内湾性が強く,干潟のよく発達した汽水域で,干潮時には砂が露出するようなところにすんでいる。キスに比べたいへん警戒心が強く,引きの強いことなどから釣りの対象魚として好まれ,東京湾などでは江戸時代以来,脚立の上に乗って釣る〈脚立釣り〉が盛んであった。しかし,昭和30年代半ばには水質汚染や生息場所である干潟の埋立てなどにより減少し,現在では東京湾,伊勢湾などで絶滅したようである。現在,吉野川河口など西日本の数ヵ所で生存が確認されており,本種の絶滅が心配されている。
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関連語 望月

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アオギス」の意味・わかりやすい解説

アオギス
Sillago parvisquamis

スズキ目キス科の海水魚体長 30cm。体色青みを帯びていることからこの名がある。ヤギスともいう。四国吉野川河口,山口県木屋川河口,大分県鹿児島県台湾に分布する。かつては江戸前釣魚として知られた(→脚立釣り)。食用にも供されるが,味はシロギスより劣る。

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