改訂新版 世界大百科事典 「アカタテハ」の意味・わかりやすい解説
アカタテハ
Vanessa indica
鱗翅目タテハチョウ科の昆虫。インドからアジア東部に広く分布するが,北西アフリカ沖のカナリア諸島とマデイラ島にも分布している。前・後翅の表面に赤い紋のあるタテハチョウで,開張6.5cm前後。日本全国にふつうであるが,個体数は必ずしも多くない。海岸から高山のお花畑まで,垂直分布は広範囲にわたり,季節的に高地と低地の間を移動している可能性もある。年に少なくとも2回は発生し,成虫で越冬する。屋内や軒先などで越冬するものは冬でも暖かい日には飛ぶことがある。幼虫はイラクサ科の植物の葉を食べ,1枚の葉で巣をつくり,蛹化(ようか)も巣の中で行う。ヨーロッパに分布するV.atlantaはそのきびきびした動作からred admiralの名で親しまれている。やや小型の近縁種にヒメアカタテハCynthia carduiがある。これは南アメリカを除く世界中に分布する。幼虫の食草はおもにキク科,とくに日本ではゴボウとハハコグサに多い。外国ではアザミ類を好むものが多く,大発生,大移動をすることがある。日本では戦後一時期きわめてふつうであったが,最近は年によってはまれな地方もある。
執筆者:高倉 忠博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報