日本大百科全書(ニッポニカ) 「アカタテハ」の意味・わかりやすい解説
アカタテハ
あかたては / 赤蛺蝶
Indian red admiral
[学] Vanessa indica
昆虫綱鱗翅(りんし)目タテハチョウ科に属するチョウ。琉球(りゅうきゅう)列島(南西諸島)を含む日本全土に広く分布し、各地に普通にみられる。しかし、その飛び方が速くて捕らえにくい。日本以外では朝鮮半島、中国全土、台湾、インド、スリランカなどに産する。ヨーロッパのスペイン、ポルトガル、アフリカ北西岸のマデイラ諸島やカナリア諸島にも産するが、これは人為的にインドから持ち込まれたものといわれている。はねの開張は60ミリメートル内外。雌雄による色彩や斑紋(はんもん)の差異はない。寒冷地では年1回の発生であるが、西南日本の暖地では多化性で年3~4回発生し、冬季を除いてほぼ年中その姿をみることができる。成虫は樹液や花にくる。幼虫の食草はカラムシ(マオ)、イラクサなどのイラクサ科植物、寒冷地ではニレ類やケヤキなどのニレ科植物につくことも多い。まれにアサ科植物にもつく。越冬態は成虫であるが、暖地ではときに幼虫で冬を越すこともある。日本では本種に近縁なものにヒメアカタテハがある。
[白水 隆]