アカムツ(読み)あかむつ(英語表記)blackthroat seaperch

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アカムツ」の意味・わかりやすい解説

アカムツ
あかむつ / 赤鯥
blackthroat seaperch
[学] Doederleinia berycoides

硬骨魚綱スズキ目ホタルジャコ科に属する海水魚。1984年、科の分類がスズキ科からホタルジャコ科に変更された。太平洋側では北海道から、日本海側では青森県以南から九州南岸まで、東シナ海、朝鮮半島南岸、山東(さんとう)半島、台湾、フィリピン諸島、インドネシア、オーストラリア北西岸に分布する。体は長卵形で側扁(そくへん)する。目と口が大きく、眼径は吻長(ふんちょう)より大きい。上顎(じょうがく)の後端は目の中央部下に達し、下顎は上顎よりもわずかに突出する。鱗(うろこ)は大きい櫛鱗(しつりん)で、はがれやすい。背びれ棘(きょく)部と軟条部の境に深い欠刻(切れ込み)がある。背びれと臀(しり)びれの棘は細くて弱い。胸びれは長くて、先端は臀びれの始部付近に達するが、腹びれは短い。体色は赤色で、腹方は白い。背びれ棘部の縁と尾びれの後端は黒い。口内が黒いので、別名ノドグロともよばれる。水深60~600メートルの大陸棚とその斜面にすみ、10センチメートル前後の小形魚は約100メートル付近に、20センチメートル以上の大形魚は200メートル以深にすむ。小形魚類、大形甲殻類、イカ類などを捕食する。雌は4年、雄は3年で成熟する。7~10月に大陸棚より深い岩場周辺で産卵し、多くの雄は産卵後に死ぬと考えられている。満1年魚までは雌が雄より少ないが、満2年魚から逆転し、3年目では雌が80%、4年目では98%ぐらいを占める。1年で10センチメートル前後、3年で20~23センチメートル、5年で27~31センチメートルになり、雌は雄より成長がよい。最大全長は40センチメートルに達する。小形魚は冬季山陰地方底引網により多量に漁獲される。肉は白身煮つけ、たたき、焼き物などにすると美味である。大形魚は高級魚であるが、小形魚の価格も上昇してきている。

片山正夫・尼岡邦夫 2020年6月23日]

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改訂新版 世界大百科事典 「アカムツ」の意味・わかりやすい解説

アカムツ
Doederleinia berycoides

スズキ目スズキ科の海産魚。おもに日本の中・南部沿岸から朝鮮半島南部に分布する。口内が真黒色のため多くの地方でノドクロまたはノドグロと呼ばれるが,同様の特徴をもつ別の魚をそのように呼ぶ地方もあるので注意を要する。体色が赤いのでアカムツの名がある。高知でアカウオまたはキンギョ,富山でギョウスンなどとも呼ぶ。全長40cmに達する。背びれは1基でその中央部が低くなっており,しりびれには3棘(きよく)がある。うきぶくろの前端が突出し頭骨のくぼみに深く入っている。なお,分類に関しては近年異説も提唱されている。おもに水深200m以浅の砂泥底にすみ,魚類,甲殻類,イカ類などを食べる。産卵期は5~10月である。底引網,釣りなどにより漁獲され,煮つけなどにして美味である。体色が赤いため,地方によってはマダイの代用として用いる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アカムツ」の意味・わかりやすい解説

アカムツ
Doederleinia berycoides

スズキ目ホタルジャコ科の海水魚。食用。全長約 40cm。体はやや長く,側扁し,下顎は上顎より突き出る。眼は比較的大きい。腹部は白色,ほかは鮮紅色。福島県・新潟県以南,東部インド洋・西部太平洋に分布する。

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世界大百科事典(旧版)内のアカムツの言及

【オイカワ】より

…カワムツZ.temmincki(イラスト)は形態も似ているが,体側に太い暗青色の縦帯があるので容易に区別される。ムツ,モツ,アカムツなどの地方名がある。中部地方以西の日本および朝鮮半島などに分布するが,近年は関東地方の一部にも見られる。…

※「アカムツ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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