六訂版 家庭医学大全科 の解説
アキレス腱炎・アキレス腱周囲炎
アキレスけんえん・アキレスけんしゅういえん
Achilles tendinitis, Achilles peritendinitis
(運動器系の病気(外傷を含む))
どんな病気か
アキレス腱炎は使いすぎによるオーバーユース症候群のひとつで、スポーツ障害としては頻度の高いものです。繰り返しのストレスによりアキレス腱に微細な部分断裂や
アキレス腱はパラテノンという薄い膜でおおわれていますが、この部分に炎症を生じた場合をアキレス腱周囲炎といいます。
この両者は同時に発症していることも多く、厳密に区別することは難しいこともあります。アキレス腱付着部に生じるアキレス
原因は何か
加齢変化のひとつである腱の変性がベースにあるため、中年以上の市民ランナーやウォーキングをしている人に多く発症します。使いすぎが原因しているために、運動量と発症には密接な関係があり、不適切なトレーニング方法が原因していることもあります。また、靴の不適合や
症状の現れ方
かかとへの付着部から上方2~6㎝部分のアキレス腱が
進行すれば足関節の動きが悪くなり、アキレス腱周囲炎では足関節を動かすとアキレス腱にきしむような摩擦音が聞こえることがあります。
検査と診断
X線検査でははっきりと診断がつかないことも多いですが、まれに石灰沈着している場合などにはわかることがあります。
MRIをとると腱がふくらんでいるのがよくわかり、変性の程度などの詳細な診断が可能です。また、超音波検査も簡便で有効な方法です。
治療の方法
保存治療が原則で、痛みが強い時には運動を控えて局所を安静に保ちます。湿布や一時的な消炎鎮痛薬の内服も有効です。
少しヒールのある靴を履いてかかとを上げると、アキレス腱の緊張が軽減され疼痛が改善します。また、扁平足などの足部変形がある場合には、
スポーツ選手への局所注射は、腱の変性や断裂を生じる場合があり、慎重を要します。慢性期で再発を繰り返す場合には、手術的にアキレス腱を再建する方法がありますが、適応になるのはごくまれです。
症状の改善が認められれば徐々にスポーツを始め、運動前のストレッチングや運動後のアイシングを励行するようにします。
病気に気づいたらどうする
基本的には使いすぎによる障害ですので、運動量をひかえて局所の安静を保って腱が修復されるのを待ちます。
アキレス腱に負担のかかりにくい競技種目に、一時的にでも変えてみるのもひとつの方法です。
田中 康仁
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報