アクトミオシン(読み)あくとみおしん(英語表記)actomyosin

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アクトミオシン」の意味・わかりやすい解説

アクトミオシン
あくとみおしん
actomyosin

アクチンミオシンの結合体。新鮮な筋肉のひき肉を、濃い塩化カリウム溶液で抽出し、注射器で水の中に押し出すとゼリー状の紐(ひも)ができる。これは天然のアクトミオシンであるが、これにATPアデノシン三リン酸)を加えるときゅっと縮まる。すなわち、ATPアーゼ活性を示す。この現象は1942年ハンガリーのセント・ジェルジー(1947年アメリカに亡命)により発見され、「試験管内での筋収縮」とよばれ注目された。精製アクトミオシン系ではアクトミオシンATPアーゼ活性はカルシウムイオンの制御を受けないが、江橋節郎(えばしせつろう)(1922―2006)は、アクトミオシンにカルシウム感受性を与えるタンパク質を発見し(1963)、この因子トロポミオシン‐トロポニン複合体であることを示した(1965)。この結果は、筋収縮の機構の解明に寄与した。

[飯島道子]

『日本物理学会編『生物物理のフロンティア――蛋白質 筋収縮 脳・神経』(1989・培風館)』『神谷律・丸山工作著『細胞の運動』(1992・培風館)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アクトミオシン」の意味・わかりやすい解説

アクトミオシン
actomyosin

筋肉の主要構成蛋白質であるアクチンとミオシンの複合物。 A.セント=ジェルジは筋肉を塩化カリウムで抽出して,ミオシンAとミオシンBを得たが,このミオシンBが,アクトミオシンであった。アクトミオシンの粘度は高いが,マグネシウム存在下に,アデノシン三リン酸 ATPを加えるとアクチンとミオシンが解離して,粘度の急低下を示し,このとき ATPが加水分解される。これは無傷筋肉内でのアクチンとミオシンのフィラメント間の架橋切断および組換え,すなわち収縮における滑りと見合う現象と考えられる。またアクトミオシンを細いノズルから吹出して肉眼的なフィラメントをつくり,マグネシウムと ATPを添加すると,このフィラメントが ATPを分解しつつ縮むことも知られていて,筋収縮のモデル現象と考えられる。なお精製アクチンとミオシンを重量比で1:3に混合しても,同じ性質のアクトミオシンが合成できる。

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