日本大百科全書(ニッポニカ) 「アケロン」の意味・わかりやすい解説
アケロン
あけろん
Acherōn
ギリシア神話における冥界(めいかい)の川。死者が冥界に行くには、渡し守カロンの舟でこの川を渡らなくてはならなかった。アケロンは大地の神ガイアの子で、オリンポスの神々が巨人族と戦ったとき、負けた巨人族に川の水を飲ませた罪のために地下に追放された。彼は闇(やみ)のニンフのオルフネ、またはゴルギラと交わってアスカラフォスを生んだ。同名の川は各地にあるが、エピロスにあるものは、深い谷間から発して中流は地下を通り、河口近くで有害な沼をなしていた。この特殊な川がアケロンと冥界との連想を生んだと考えられる。ローマ帝政期の神秘宗教では、アケロンは天の南極付近のアンティポデスの星座の間を流れていると信じられていた。
[小川正広]