日本大百科全書(ニッポニカ) 「アシェット」の意味・わかりやすい解説
アシェット
あしぇっと
Hachette
フランス最大規模の出版社。1826年創立。エコール・ノルマルの学生だったルイ・クリストフ・アシェットLouis Christophe Hachette(1800―1864)が、パリの書店ブレディフを買い取って自分の名前を社名にし、教科書出版に乗り出したのが始まりである。
鉄道のニューススタンド販売網の独占に始まる取次販売業務、雑誌『エル』(1945創刊)などに代表される定期刊行物への進出、ポケット本叢書(そうしょ)「リーブル・ド・ポッシュ」Le Livre de Pocheの発刊(1953)、アメリカの百科事典出版の大手グロリアGrolierの買収(1988)によりマルチメディアへの道を開くなど、その発展拡張は止まるところがない。1980年代に兵器およびエレクトロニクス産業のマトラ・グループMatra Groupeに発行株式の80%を買い占められてからその傘下に入り、現在は兵器・宇宙・ハイテク産業の巨大コングロマリット、ラギャルデール・グループLagardère Groupeのメディア部門をなしている。メディア部門は、書籍出版のアシェット・リーブルHachette Livre、雑誌出版のアシェット・フィリパッキ・メディアHachette Filipacchi Médias、取次販売のアシェット・ディストリビューシヨン・セルビスHachette Distribution Services、音楽・映像のユーロップ・アン・コミュニカシヨンEurope 1 Communication、マルチメディアのグロリアの5部門に分かれる。メディア部門の1999年の売上高合計は451億5300万フラン(68億8400万ユーロ)。フランス出版業界は1990年代に入って、アシェットとラ・シテLa Citéの二大出版グループによる寡占状態に置かれ、この両社でフランス全体の出版売上げの約60%を占めるに至っている。
日本では、1989年(平成1)にアシェット・フィリパッキ・メディアとアメリカのタイム・ワーナー社との合弁による日本法人タイム・アシェット・ジャパンが設立され、同年に雑誌『エル・ジャポン』を創刊。1993年(平成5)にはアシェット・フィリパッキ・メディアの100%子会社となり、1999年11月、婦人画報社と合併してアシェット婦人画報社が発足した。
[矢野浩三郎]