日本大百科全書(ニッポニカ) 「アッバス」の意味・わかりやすい解説
アッバス
あっばす
Mahmoud Abbas
(1935― )
パレスチナの政治家。現イスラエル北部のサフェド生まれ。1948年のイスラエル建国でシリアへ移住。シリア・ダマスカスの大学で法律を学んだ後、モスクワの大学で歴史学博士課程を修了。カタール亡命中の1957年、アラファト率いるパレスチナ民族解放運動組織「ファタハ」の創設メンバーに加わる。その後パレスチナ解放機構(PLO)の要職を歴任、つねにアラファトの側近としてパレスチナ解放運動を支えた。イスラエルとの和平に積極的な穏健派で、1993年のオスロ合意(パレスチナ暫定自治合意)に至る秘密交渉を取り仕切ったことでも知られる。2003年4月、パレスチナ自治政府の初代首相に就任。アメリカやヨーロッパ連合(EU)などが起案した新和平案「ロードマップ」実現の鍵(かぎ)を握る人物である。しかし、首相就任後、イスラエルとの交渉姿勢についてPLO内部から「弱腰」などの批判があがり、また、権限をめぐってアラファトとの確執も伝えられ、2003年9月には同職を辞任した。2004年11月、アラファトの死去に伴い、後任としてPLO議長に就任した。また、2005年1月アラファトの後任としてパレスチナ自治政府大統領(ライースRais)に選出され、就任。アブ・マーゼンの別名でも知られている。2005年2月8日エジプトのシャルムエルシェイクで、イスラエルのシャロン首相と初の首脳会談を行った。
[尾関航也]