日本大百科全書(ニッポニカ) 「ファタハ」の意味・わかりやすい解説
ファタハ
ふぁたは
Fatah
パレスチナ自治政府の政党で、パレスチナ解放機構(PLO)の主流派組織。イスラエルとの対話による和平を進める穏健派である。ファタハはパレスチナ人民解放運動のアラビア語表記Harakat al-Tahrir al-Watani al-Filastiniの頭文字を逆に並べたことばで、アラビア語で「開くこと」「勝利」などを意味する。1950年代後半に、パレスチナ独立を目ざすアラファトがシリアなどの支持を得て創設し、初代議長に就任。のちにPLOに加入し、PLOの最大勢力となった。本部は当初ヨルダンのアンマンにあったが、その後、レバノンのベイルート、チュニジアのチュニス、パレスチナ自治区のガザなどを転々としている。傘下にテロ組織「黒い9月」などがあり、初期はハイジャックなどイスラエルへの武装闘争を繰り返し、1972年のオリンピック・ミュンヘン大会では選手村を襲撃してイスラエルの選手とコーチを殺害する事件を起こした。しかし1988年にはイスラエルの存在を認め、イスラエルとの対話路線に転じた。ファタハが率いるPLOは1993年に中東のヨルダン川西岸地区およびガザ地区をパレスチナ自治区とすることでイスラエル政府と合意した(パレスチナ暫定自治合意)。2004年のアラファト死去後は、ファタハ創設メンバーの一人であるアッバスが2代目議長を務めている。その後、2006年のパレスチナ自治評議会選挙でイスラム原理主義組織ハマスに大敗し、2007年にはハマスがガザ地区を武力制圧した。以降、パレスチナ自治区のうち、ガザ地区はハマスが実効支配し、ヨルダン川西岸地区のみをファタハが統治するという分断状態が続いている。ファタハは2014年6月、ハマスと統一政権樹立で合意したが、2014年8月時点で、ハマスはガザ地区の実効支配を続けている。
[編集部]