アナクサゴラス(読み)あなくさごらす(英語表記)Anaxagorās

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アナクサゴラス」の意味・わかりやすい解説

アナクサゴラス
あなくさごらす
Anaxagorās
(前500ころ―前428ころ)

古代ギリシアの哲学者。小アジアのイオニア地方の町クラゾメナイに生まれる。アテネへ移住して哲学を教えたが、ソクラテスもその講義を聴いたらしい。『ペリ・フュセオース』(自然について)とよばれる著作は散逸して、断片だけが残っている。万物のもとのもの(アルケー)はそれぞれ性質が異なる種子スペルマタ)であって、あらゆるものはこの全種類の種子を含むが、どの種子をもっとも多く含むかによって、そのものの何であるかが決まってくる。そして、世界の初めは、これらの種子全体が入り混じり混沌(こんとん)とした状態にあったが、ヌース(精神)がこれに旋回運動を与えて分離させ、この秩序ある世界をつくりあげたというのが、その教えである。天体は大地から切り離された石であり運動のために赤熱化しているとか、大地は平板状であるとか説いたらしく日食の原因も知っていたらしい。

鈴木幹也 2015年1月20日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アナクサゴラス」の意味・わかりやすい解説

アナクサゴラス
Anaxagoras

[生]前500頃.小アジア,クラゾメナイ
[没]前428頃.ランプサコス
ギリシアの哲学者。太陽を灼熱した石であるとした学説ゆえに,友人ペリクレスの政敵により不敬罪に問われアテネを逃れる。彼は万物の生成変化を否定し,諸個物は太初混沌状態にある根源的構成要素スペルマタ spermata (種子) が,合目的的に行動する動力因 (ヌース) によって旋回運動を与えられて生じると説く。その際個物にはすべてのスペルマタが含まれているが,同質のスペルマタの数により個性が決定され,それゆえ「一切の中には一切の部分がある」といわれる。彼の著『自然について』はソクラテスの時代に広く読まれた。

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