改訂新版 世界大百科事典 「アナジャコ」の意味・わかりやすい解説
アナジャコ
Upogebia major
甲殻綱アナジャコ科に属し,分類学的には異尾類,すなわち広い意味のヤドカリ類であるが,全体的な形態はエビ類に近い。また,甲の石灰化が不完全であることやほぼ三角形の頭胸甲,幅広い腹部などはシャコを思わせるが,シャコの仲間ではない。体長9cm。第1胸脚はきわめて不完全なはさみを形成している。潮間帯から水深20mくらいまでのやや硬い砂泥地に直径2.5cm,深さ30cmほどの穴を掘ってすむ。北海道から九州までにごくふつうに見られ,韓国,中国北部にも分布する。東京湾,瀬戸内海,有明海などにとくに多産し,くわで掘り出してつかまえ,タイやクロダイ釣りの餌とする。地方によっては,穴の中におとりのアナジャコを入れたり,あるいは使い古した筆をさしこんで,排除しようと出口近くまで出てきたところをすばやくつかまえる。産卵は5月上旬から6月中旬が盛期で,産卵数が著しく多い。
執筆者:武田 正倫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報