ファッション性の強い衣服を企画,製造,販売する産業のことを日本でこういう。〈アパレルapparel〉とは,英語で衣服,服装の意味である。アパレルなりアパレル産業という言葉が日本で使われはじめたのは1970年ころからである。発展途上国の繊維産業が急速に力をつけ,日本の競争相手となってきた状況のなかで,このころから高付加価値化の必要性が叫ばれるようになり,色,柄,デザインに優れ,流行にマッチした,さらには先取りする商品を企画・製造するファッション産業への転進をめざす衣料品メーカーもふえてきた。ファッション産業の代表的なものがアパレル産業である。70年代に入ってからの衣服市場の特色としては,需要面では,所得水準が向上し量的にはある程度満ち足りた消費者が,奢侈(しやし)的な満足を得るために衣服を買うようになってきており,供給面では衣服の多くが既製化されるようになってきたことがあげられる。こうした状況においてメーカーは,消費者ニーズを的確にとらえ,あるときには先取りすることが重要になってきたわけである。このような変化にうまく対応して,アパレル産業は急速な成長を遂げた。アパレル産業の特色は,衣服という“物”を媒体にして,流行という“情報”を提供することにあるので,アパレル業界では,情報を収集して販売機能を担当する企業と,生産機能を担当する企業とに分かれていることが多い。そして,一般に,商品企画力をもつ企業のほうが優位にたっており,その下に下請生産を受け持つ多くの零細企業をかかえるという構造になっている。また,国内における縫製工不足や賃金の上昇に対処するために,東南アジアを中心に,商品企画にもとづいた海外での生産が進んでいる。
→ファッション産業
執筆者:鈴木 明彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…したがって衣服や服飾品だけでなく,化粧品,靴・時計などの身の回り品,家具,インテリアなども含めてファッション産業とされる場合もある。とはいえ,ファッション産業の代表は,衣服を製造,販売するアパレル産業である。以下アパレル産業を中心に述べる。…
※「アパレル産業」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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