改訂新版 世界大百科事典 「ファッション産業」の意味・わかりやすい解説
ファッション産業 (ファッションさんぎょう)
ファッションという言葉は,〈ある特定の期間に誕生した衣服,装飾品あるいはスタイルで広く流行したもの〉を意味する。この定義からすると,ファッション産業はこれら流行商品を取り扱う産業ということになるが,今日では必ずしも流行だけにとらわれることなく,色,柄,デザインなどを重視した商品を広くファッション商品と呼び,これらを企画,製造,販売する産業を広義のファッション産業と呼ぶことが多い。したがって衣服や服飾品だけでなく,化粧品,靴・時計などの身の回り品,家具,インテリアなども含めてファッション産業とされる場合もある。とはいえ,ファッション産業の代表は,衣服を製造,販売するアパレル産業である。以下アパレル産業を中心に述べる。
日本の繊維工業は長い間原糸および織物生産中心で展開され,アパレル分野が繊維工業のなかで重要な位置を与えられたのは,昭和30~40年代あたりからにすぎない。しかし衣料消費が成熟化するとともに,原糸や織物生産部門は構造不況の色彩を強め,ファッション産業としてのアパレル産業が繊維工業のなかで重要な比重を占めてくるようになった。
現在ではレナウン,オンワード樫山など年間売上げ2000億円前後(1996年度)の会社をはじめ,売上高数百億円を超える大手アパレル・メーカーが数多く出現しているが,その多くは合繊や織物などの製造分野でなく,卸・小売分野から出たものが多い。企画・商品開発力が重要なため,最近では若手人気デザイナーを中心とし個性的なファッションを売りものにする企業が急速に台頭し,企業規模も既存の中堅企業に匹敵するものがかなりでている。これら若手デザイナーによるファッション商品は,〈東京ファッション〉として海外からも高い評価を受けはじめている。
執筆者:中山 裕登
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報