日本大百科全書(ニッポニカ) 「アブラチャン」の意味・わかりやすい解説
アブラチャン
あぶらちゃん / 油瀝青
[学] Lindera praecox (Sieb. et Zucc.) Bl.
クスノキ科(APG分類:クスノキ科)の落葉低木。山地に普通に生え、高さ3メートルに達する。樹皮は灰褐色で皮目があり、若枝は緑色。葉は、質は薄いがじょうぶで、光沢があり、卵形で長さ4~9センチメートル、羽状脈があり、鋸歯(きょし)はない。花は3~4月、葉が出る前に開き、短枝の基部から二つずつ出た小形の散形花序につき、淡黄緑色。雌雄異株。果実は球形で大きく、直径1.5センチメートル。ほかのクロモジ属植物とは異なり、裂開して1個の種子を放出する。この特徴のためにシロモジとともに別属とする説もある。名は、果実から油をとり、また材が油を含みよく燃えることによる。「チャン」は瀝青(れきせい)の英語Chian turpentineをあてたもの。本州から九州、朝鮮半島、中国中部に分布。
[門田裕一 2018年8月21日]