改訂新版 世界大百科事典 「アブラチャン」の意味・わかりやすい解説
アブラチャン
Parabenzoin praecox(Sieb.et Zucc.) Nakai
高さ6m,直径15cmほどになるクスノキ科の落葉小高木で,本州,四国,九州の温帯~暖帯の山地に分布し,山腹から沢筋の適潤地によくみられる。樹皮は灰褐色で平滑。葉は互生し,葉身は長さ4~9cmの卵形または楕円形で裏面がやや白い。雌雄異株。3,4月ごろ,新葉の出る前に緑黄色の小花が数個ずつかたまって咲く。果実は直径約1.5cmの球状の液果で,秋に黄褐色に熟し,中に1個の種子をもつ。種子の油は中部地方で灯用とした。枝葉も油を含み,生木でもよく燃えるのでたき木によく,そのためアブラチャン(油瀝青)と呼ばれるという。同属のシロモジP.trilobum (Sieb.et Zucc.) Nakaiは本州の中部以西,四国,九州,中国に分布する落葉小高木で,葉は3中裂する。種子からは同様に油をとる。
執筆者:緒方 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報