日本大百科全書(ニッポニカ) 「アブー・ヌワース」の意味・わかりやすい解説
アブー・ヌワース
あぶーぬわーす
Abū Nuwās
(762ころ―810ころ)
アラブの詩人。酒を歌った詩人としてはアラブ随一で、広くアジア、アフリカ諸国の民衆の間にも愛唱されている。ペルシアのアル・アフワーズに、アラブ人を父、ペルシア人を母として生まれる。バスラ、クーファで学び、アッバース朝第5代のハールーン・アッラシード治下のバグダードの宮廷で詩才を認められるが、飲酒、不敬の罪により投獄されること数回に及ぶ。しかし次のカリフ、アミーンにも仕え、酒の詩を書き続けた。快楽は人生の最高の美徳であると公言していたといわれるが、彼の詩にも道徳的感情がところどころに吐露されている点は見逃せない。
[内記良一]