アブーヌワース(その他表記)Abū Nuwās

改訂新版 世界大百科事典 「アブーヌワース」の意味・わかりやすい解説

アブー・ヌワース
Abū Nuwās
生没年:747から762-810から813

アッバース朝期最大の詩人アフワーズで生まれ,バスラで育つ。薬剤師生業としていたが詩才が認められ,クーファバグダード,さらに遊牧民の間で教養を積む。宰相バクマク家を通してアッバース朝カリフハールーン・アッラシード,次いでアミーン,マームーンの知遇を得,その深い親交は《千夜一夜物語》にも描かれている。詩はあらゆる領域にわたって秀逸であるが,とくに恋愛と酒の詩が名高い。表現は平明であるが,その伝統を無視した斬新な詩作法は,後世に多大な影響を残した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アブーヌワース」の意味・わかりやすい解説

アブー・ヌワース
あぶーぬわーす
Abū Nuwās
(762ころ―810ころ)

アラブの詩人。酒を歌った詩人としてはアラブ随一で、広くアジア、アフリカ諸国の民衆の間にも愛唱されている。ペルシアのアル・アフワーズに、アラブ人を父、ペルシア人を母として生まれる。バスラ、クーファで学び、アッバース朝第5代のハールーン・アッラシード治下のバグダードの宮廷で詩才を認められるが、飲酒、不敬の罪により投獄されること数回に及ぶ。しかし次のカリフ、アミーンにも仕え、酒の詩を書き続けた。快楽は人生の最高の美徳であると公言していたといわれるが、彼の詩にも道徳的感情がところどころに吐露されている点は見逃せない。

[内記良一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アブーヌワース」の意味・わかりやすい解説

アブー・ヌワース
Abū Nuwās

[生]756頃.アフワーズ
[没]813頃.バグダード
アラブの詩人。母はペルシア人。バスラやクーファで学んだのち,バグダードに出て,カリフ,ハールーン・アッラシードやその子アミーンの陪食者の一人となった。酒,恋,風刺頌詩,狩猟その他の詩作で天分を発揮し,アラブの最も偉大な詩人の一人と評され,アッバース朝の黄金時代を飾った。酒を愛し,即興詩に長じていた点など,唐の詩人李白を偲ばせる。晩年は敬虔で神秘的な作品に転じた。

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世界大百科事典(旧版)内のアブーヌワースの言及

【酒】より

…文学史上ではジャーヒリーヤ時代のカシーダ(長詩)の序言の部分に酒がたたえられ,アッバース朝(750‐1258)時代にはハムリーヤートkhamrīyāt(酒を主題にした詩)が多くつくられた。中でもアブー・ヌワースは最大の退廃的詩人で,酒屋に入りびたり,同性愛にふけり,数々の悪徳をつんだ。一方,恋愛詩の用語を用いて神への愛をうたいあげる神秘主義詩人においては,ハムルという言葉は神との合一体験に達して,恍惚(こうこつ)とした境地に至ること(ファナー)を象徴的に表すのに用いられた。…

※「アブーヌワース」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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