アマゾン森林火災(読み)あまぞんしんりんかさい(その他表記)Amazon rainforest fires

知恵蔵 「アマゾン森林火災」の解説

アマゾン森林火災

ブラジルなど南米7カ国にまたがる世界最大の熱帯雨林、アマゾンで2019年に発生した、大規模な森林火災。特にアマゾン川の流域面積の約3分の2を占めるブラジル国内で火災が多発し、ブラジル国立宇宙研究所(INPE)によると、19年1月から8月までに起きた森林火災は約9万件と、18年の同じ時期と比べて約7割増えた。焼失面積の合計は、18年1年分の焼失面積にあたる約4万3000平方キロメートルに上った。農地開発のための野焼きや違法な伐採が原因と見られ、19年8月現在、鎮火のめどは立っていない。
「地球の肺」とも呼ばれるアマゾンは、大量の二酸化炭素を吸収し、酸素を生み出している。加えて、多様な動植物が生息していることから、今回の火災が、地球環境に及ぼす影響が懸念されている。
INPEによると、19年8月にブラジルのアマゾンで発生した火災件数は、前年同月比の約3倍、約3万件に上った。例年、7月から10月上旬の乾期は雨が非常に少ないことや、焼き畑の時期にあたることから、森林火災が増える傾向にあるが、今回の火災件数の急増は、ブラジルのボルソナーロ政権が進める森林開発が影響していると見られている。経済開発に重点を置く右派のボルソナーロは、大統領に就任した19年1月以降、アマゾンでの農牧地や鉱山の開発を後押しする一方、違法伐採などを監視してきたブラジル環境・再生可能天然資源院(IBAMA)の権限を縮小してきた。このため、野焼きや違法伐採が急増した、と指摘されている。
ボルソナーロ政権は当初、火災への対応に消極的な姿勢を見せていたが、国際社会から非難され、軍を投入して消火活動を行っている。火災が地球環境へ及ぼすことを懸念した仏マクロン大統領が、19年8月、フランスで開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)で、火災についての議論を呼びかけたが、マクロン大統領から火災対応への姿勢を批判されたボルソナーロ大統領が反発。8月26日にG7サミットで拠出が決まった2000万ドル(約21億円)の支援金を断る意向を示していたが、翌日、大統領報道官が、ブラジル側が使い道を決めることを条件に受け入れを表明した。さらに、8月29日には、60日間、森林などでの野焼きを禁止。9月6日には、南米コロンビアで、アマゾンを抱える7カ国の首脳が緊急の国際会議を開いて対応を協議し、共同で消火活動に取り組むことなどを決めた。

(南 文枝 ライター/2019年)

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知恵蔵mini 「アマゾン森林火災」の解説

アマゾン森林火災

ブラジルのアマゾン川流域における大規模な森林火災。ブラジル国立宇宙研究所(INPE)によると、2019年1月から同年8月下旬までに、13年以降最多となる8万件近い森林火災が確認された。乾期に家畜の放牧地や農地を開拓するために行われる野焼きが主な原因とされる。世界の原生林の3分の1を占め、二酸化炭素を大量に吸収しているアマゾン熱帯雨林の大規模な消失は、地球温暖化にも悪影響を及ぼす可能性があるとして国際的な批判が高まり、ブラジル政府が軍による消火活動や野焼きの防止などの対策を行っている。

(2019-8-27)

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