知恵蔵 「アマゾン森林火災」の解説
アマゾン森林火災
「地球の肺」とも呼ばれるアマゾンは、大量の二酸化炭素を吸収し、酸素を生み出している。加えて、多様な動植物が生息していることから、今回の火災が、地球環境に及ぼす影響が懸念されている。
INPEによると、19年8月にブラジルのアマゾンで発生した火災件数は、前年同月比の約3倍、約3万件に上った。例年、7月から10月上旬の乾期は雨が非常に少ないことや、焼き畑の時期にあたることから、森林火災が増える傾向にあるが、今回の火災件数の急増は、ブラジルのボルソナーロ政権が進める森林開発が影響していると見られている。経済開発に重点を置く右派のボルソナーロは、大統領に就任した19年1月以降、アマゾンでの農牧地や鉱山の開発を後押しする一方、違法伐採などを監視してきたブラジル環境・再生可能天然資源院(IBAMA)の権限を縮小してきた。このため、野焼きや違法伐採が急増した、と指摘されている。
ボルソナーロ政権は当初、火災への対応に消極的な姿勢を見せていたが、国際社会から非難され、軍を投入して消火活動を行っている。火災が地球環境へ及ぼすことを懸念した仏マクロン大統領が、19年8月、フランスで開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)で、火災についての議論を呼びかけたが、マクロン大統領から火災対応への姿勢を批判されたボルソナーロ大統領が反発。8月26日にG7サミットで拠出が決まった2000万ドル(約21億円)の支援金を断る意向を示していたが、翌日、大統領報道官が、ブラジル側が使い道を決めることを条件に受け入れを表明した。さらに、8月29日には、60日間、森林などでの野焼きを禁止。9月6日には、南米コロンビアで、アマゾンを抱える7カ国の首脳が緊急の国際会議を開いて対応を協議し、共同で消火活動に取り組むことなどを決めた。
(南 文枝 ライター/2019年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報