アマドコロ(読み)あまどころ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アマドコロ」の意味・わかりやすい解説

アマドコロ
あまどころ / 甘野老
[学] Polygonatum odoratum var. pluriflorum Ohwi

ユリ科(APG分類:キジカクシ科)の多年草。原野草間に生え、白い根茎を長く伸ばして群生する。和名は、根茎がトコロに似て、わずかに甘味があることによる。春に芽を出し、高さ40~70センチメートルの茎が弓なりに伸び、葉を互生する。葉は長楕円(ちょうだえん)形で長さ6~12センチメートル、先端はややとがり、柄はなくて茎に直結し、裏面は粉白。5月ごろ葉のわきから淡緑白色の花を下向きにつける。花は長さ2センチメートルほどの筒形、先端が6裂してやや開く。雄しべは6本、黒い球形果実ができる。根茎はゆでて食用とする。北海道から九州にかけて分布、朝鮮、中国にも広く分布する。斑(ふ)入り葉品種を庭園に植え、切り花にもする。半日陰の庭でよく育つ。

[鳥居恒夫 2019年3月20日]

薬用

根茎を萎蕤(いずい)、また玉竹(ぎょくちく)、女萎(じょい)と称し、中国では強壮鎮咳(ちんがい)、清熱剤として使用し、日本ではなまの根茎をおろして打撲、腰痛、乳幼児の湿疹(しっしん)に外用する。中国では同属の他種植物も同様に用いる。

[長沢元夫 2019年3月20日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アマドコロ」の意味・わかりやすい解説

アマドコロ(甘野老)
アマドコロ
Polygonatum odoratum var. pluriflorum

クサスギカズラ科(キジカクシ科)の多年草で,東アジアの温帯に広く分布する。日本全域の山地草原に普通に見られる。地下に長く走る根茎があり,その節から地上茎を出す。茎の基部は直立するが,上半部は斜めになり,稜があって角張る。葉は長さ 8~15cmの楕円形で互生し,裏面は白色を帯びる。斑(ふ)入りのものもしばしば見かける。春に,葉腋から 1~2個の緑白色鐘形の花を垂下する。果実は球形の液果で黒く熟する。よく似た別種ナルコユリ(鳴子百合) Polygonatum falcatumがあるが,各葉腋につく花が 3~4個と多く,茎が丸い点で区別できる。

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