改訂新版 世界大百科事典 「アマドコロ」の意味・わかりやすい解説
アマドコロ (甘野老)
Polygonatum odoratum (Mill.) Druce
山地の明るい場所に生えるユリ科の多年草。日本全土に分布する。白い筒状の花が鈴のように下向きにぶらさがって咲き可憐さが好まれ,切花によく用いられる。根は横にはい,トコロに似て甘いので,アマドコロといわれる。地下茎は淡褐色,長く横にはい,1年ごとに節ができる。地上茎は地下茎の先端につき,高さ40~80cm,葉の重みで先はしなる。葉は茎の左右にならんでつき,長楕円形で平行脈が著しく,裏面は白みを帯びる。花は葉腋(ようえき)に1~2個つき,長さ1.7~2cm,筒部は白色,先端は6浅裂し緑色を帯びる。漿果(しようか)は球形で直径1cm,熟すと黒く色づく。広く観賞用に栽培され,斑入りの品種もある。また切花用に出荷するため,畑につくる地方もある。漢方ではアマドコロや類縁種の根茎を萎蕤(いずい)と呼び,乾燥したものを煎じて強壮剤とし,また乾燥粉末を打撲傷の塗布薬とする。成分としてはコンバラマリンconvallamarinやコンバラリンconvallarinを含み,血圧降下,強心作用がある。
アマドコロ属Polygonatumは北半球の温帯に広く分布し,約40種がある。日本には約10種が分布する。ナルコユリP.falcatum A.Grayはアマドコロに比べて葉が細く先がとがり,花数が多い。アマドコロより暖地性の植物で本州,四国,九州の低山地に分布する。ミヤマナルコユリP.lasianthum Maxim.は温帯性の植物で落葉林の明るい林床に生え,地上茎は硬くややジグザグに曲がる。日本全土に分布。ワニグチソウP.involucratum (Fr.et Sav.) Maxim.は花柄に1対の苞がつく。日本全土に分布するが,まれな植物である。しばしば山草愛好家により栽培される。
執筆者:矢原 徹一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報