種々な程度の鈍力によって生ずる損傷で,表面の皮膚に創傷がないものをいう。打撲傷と挫傷contusionとはほとんど同意語として使われているが,厳密にいえば挫傷のうち打撲によるものが打撲傷である。いわゆる〈うちみ〉のこと。身体各部の外力に対する抵抗は,皮下組織や小血管が弱く,やや大きな血管,筋肉,筋膜,腱,神経などは抵抗がより強く,最も抵抗の強いのが皮膚である。むちや棒きれなどで打たれたときにできる〈みみずばれ〉では,皮膚の発赤とはれがみられるが,これは皮膚血管の拡張と軽度の滲出による。さらに鈍力が強く加わると,主として皮下組織中の毛細血管が損傷されて皮下出血を生じ,皮膚に種々な大きさの斑点(青あざ)ができる。深部の筋肉が損傷されると,当初は出血斑はみられないが,出血した血液が組織の間隙を通って重力に従って身体の低部に流れ,その部におくれて斑点が生じたり,組織間に血液が貯留して血腫をつくる。血液はしだいに吸収されて,斑点・血腫は消失する。軽い打撲傷では冷湿布などをするだけで十分だが,加わった鈍力の大きさによっては大血管や内臓の損傷,骨折などのある場合もあり,このような重篤な例では手術を必要とすることもある。
執筆者:東 博彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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