改訂新版 世界大百科事典 「アマナ」の意味・わかりやすい解説
アマナ (甘菜)
Tulipa edulis Baker
日当りのよい山すその草地に生え,春先に白い可憐な花をつけるユリ科の多年草。ムギグワイともいう。栽培のチューリップと同じ属に属する野生種である。鱗茎は地中深くにあり,1本の細い地上茎を伸ばす。葉は線形で1対あり,地表面に平開する。花茎は春先1本のみ伸長し,高さ15~30cmで,1輪の頂花をつける。頂花の下には1対の苞葉がある。花は最初は鐘形で日光を受けると平開する。花被片は白色で,裏面に淡い紫条がある。果実は三稜形で長さ1cm程度。果実をつけた後,地上部は枯れ,夏季には地下部によって休眠する。鱗茎は良質のデンプンを含み,煮るか焼いて食用とする。和名は苦みのないその味に由来する。漢方では山慈姑(さんじこ)と呼び,乾燥した鱗茎を滋養強壮剤に用いる。可憐な花を観賞するために,山草愛好家により栽培されることがある。本州(福島以南),四国,九州,朝鮮半島,中国大陸に分布する。
執筆者:矢原 徹一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報