アミエル(読み)あみえる(英語表記)Henri-Frédéric Amiel

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アミエル」の意味・わかりやすい解説

アミエル
あみえる
Henri-Frédéric Amiel
(1821―1881)

フランス語圏スイスの哲学者、文学者。ドイツの大学で哲学を学んだのち、ジュネーブ大学美学を教え、のち哲学教授になる。死後その1万7000ページに上る『日記』の一部(全体の約15分の1)が出版され(1883、1927)、広く読まれるようになった。フランス語で考え、フランス語を用いながら、ドイツ哲学によって深い影響を受けた彼は、独仏両文化の相互浸透の珍しい例の一つとなっている。彼は、自我と普遍的宇宙生命との対決無限へのあこがれ、絶対への願望などの問題を追求する反面、自らの自我の流動的でとりとめのない、無に等しい状態を思考の解剖台上にのせ、執拗(しつよう)に切り刻んだ過程を、その膨大な日記中に記録することによって、他に類例をみないほどの精密で厳しい自己分析を行った。

[土居寛之 2015年5月19日]

『河野与一訳『アミエルの日記』全4冊(岩波文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アミエル」の意味・わかりやすい解説

アミエル
Amiel, Henri-Frédéric

[生]1821.9.27. ジュネーブ
[没]1881.5.11. ジュネーブ
フランス系スイスの文学者,哲学者。大学教育はドイツで受け,ヘーゲル,シェリングを学ぶ一方,ドイツの音楽,詩に心酔。帰国後,1849年からジュネーブ大学教授として美学と哲学を講じた。数冊の小論文と詩集,特に巧みな訳詩集を発表したが,今日彼の名を高めているのは死後刊行された『日記』 Fragments d'un Journal intime (1882~84) である。幼くして孤児になり,一生独身で過した彼が,ドイツ留学時代の 1847年から没年にいたるまでの孤独と苦悩の日々を1万 6900ページにわたって書き綴ったノートからの抄録で,日記文学の傑作とされている。そこには,絶対的普遍的真理を求める理知的な哲学者の姿と,内省瞑想にふけり,絶えず不安に悩まされる病的な魂とがみられる。その後も未発表部分が増補,出版されて注目を集めている。

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